台風の爪痕2015/09/02 09:30

 Facebookでも触れましたが、先週、九州地方に上陸した台風15号は熊本の街にも大きな爪痕を残しました。皆様の中で被災された方には心よりお見舞い申し上げます。
 
 そんな台風が通過して間もなく吹き返しの風も弱まった頃合いを見計らって、樹木の様子を実際に見に行ってみました。商売柄、街の樹木がどうなっているかが気になってしょうがありませんでした…。
 
 下の写真は熊本市内の産業道路沿いに植えられているケヤキです。根元から倒れ、沿道のビルに寄りかかっているのがわかあります。この沿線では他にも多くのケヤキの木が倒れていました。

ケヤキの倒木

 上の写真の場所から少し離れた住宅街では、マンションに植栽されて間もないと見られるシマトネリコが根元から歩道へと倒れていました。元々成長が早い樹木で、枝葉が茂りすぎていたにもかかわらず、狭い植栽スペースの中では十分に根が張れなかったと思われます。

シマトネリコ倒木

 下の写真は、当社が管理しているキリスト教団体の施設の庭です。サクラの木が根元付近より倒壊しています。折れた部分をよく見るとシロアリが食害したあとが見受けられますし、幹内部にもキノコが生えていました。激しい腐朽の為に、この部分が弱くなっていたと考えられます。

サクラ倒壊

 隣地との境界に植えられていたタイサンボクはフェンスを壊して根元付近より倒れています。葉が非常に肉厚で、枝葉が重いこの樹木にとっては他の樹木のように枝をしならせて風をかわす事が出来なかったのでしょう?風速40メートルを超える強風は過酷すぎたようです。

タイサンボク倒木

 
 最後の写真は施設のシンボルともいえる前庭のユーカリの木です。無惨にも途中から枝が折れています。成長が早いこの樹木は1年間で1メートル以上も枝を伸ばします。昨年が丁度、施設の改修工事の準備期間で剪定作業が出来ず、まる2年間枝を伸ばし放題にしておいた事が今回の被害を大きくしたと考えられます。元々オーストラリアの乾燥帯原産の樹木なので、強風には弱いという特徴もあるみたいです。

 十字架に磔になっているキリストに鞭を打つような格好になっている様子は少々無惨にも思えます。この木は以前この施設におられた方々にとって非常に意味のある樹木だそうで、ここに努められているシスターと相談の上、折れた所のみを切除して、今後も保存していくという事になりました。早速、写真を撮影した翌日から作業を行い、今では三分の一程の高さになってしまいましたが、きっと2〜3年経てば見違えるようになっている事でしょう。


ユーカリ枝折れ
 
 この他、当社が管理している国道や個人庭園でも多くの倒木や枝折れがありました。幸い、人的な被害は無かったのですが、もし、下を人や車が通っていたらとゾッとするような場所もあります。

 このような台風被害を踏まえて、今後、街路樹や公園樹など公共の樹木では普段から診断を行い、倒れる危険があるものに関しては、事前に対策を講じるという考えが必要だと痛感させられました。個人庭園や大きな施設に植えられている樹木についても、普段から剪定や消毒など手入れを行う事の重要性を改めて認識させられました。

 昨日、当社も行政からの依頼を受けて国道の街路樹の診断を行う事になりました。実際の調査は来週からなのですが、倒木に繋がるような傷や空洞、キノコの発生等が無いかどうかなど、しっかりとした診断をしてこようと思っています。街路樹は決して危険なものではなく、安全で安心感のあるものだと、それが本来持っている優れた点をちゃんと理解してもらう事が調査の目的です。



不思議な樹木2015/08/17 10:55

 昨日でお盆休みも終わり、今日から出勤という方が殆どだと思います。この休日の間に皆さんの中には山へ海へ、あるいは久しぶりの里帰りなどと慌ただしい毎日を過ごされた方も多いのではないでしょうか?

 私はこのお盆の間に先祖の供養と近場のドライブでも、と考えていたのですが、急遽呼び出しが掛かり、14日は熊本市内の小学校の樹木調査をやるはめになってしまいました。調査の目的は枝が枯れたり、幹が腐朽したりしていて、枝折れや倒木の危険のある樹木を拾いだすというものでした。確かに、連休中は学校への人の出入りも少ないので都合が良かったのでしょう?

 調査は簡単なものだったのですが、小学校の樹木を改めて見てみると、結構面白い発見があります。下の写真は、ケヤキの木にツルウメモドキが巻き付いている様子です。巻き付いている方のツルウメモドキがかなり多きく成長しているためにケヤキの成長が阻害され、やっとこさ生きているという感じです。まるで、アントニオ猪木の得意技コブラツイストを掛けられているように見えます。

ツルウメモドキとケヤキ

 次の写真は株元で枝分かれした一本の木のように見えるのですが、実はこれ全然別の木が根元付近で合体しているものです。向かって右側の細く曲がっているのがクスノキ左側の真っ直ぐなのがハリエンジュです。この二つは種が同じとかいうことも無く、全く無縁の樹木なのですが、御覧のように仲良くくっつきながら成長しています。
 
ハリエンジュとクスノキ

 三番目の写真はナナミノキです。幹の上の方をよく見ると、横方向に走った亀裂の中に自らの枝を飲み込んでいるのが分かります。まるで自分の腕に噛み付いているようにも見えます。上の樹木と違って、こちらは自分自身の事があまり気に食わないのでしょうか。

ナナミノキ

 
 最後の写真はサクラについたコフキサルノコシカケです。縦横ともに30㎝はあろうかという立派なキノコです。幹の内部は殆ど腐朽しているものと思われます。
 この日の調査でも問題が見つかった樹木の九割近くがサクラの木でした。それも植えられてから40年ほどは経っていると思われる木が殆どです。一般的にサクラ(ソメイヨシノ)の寿命は60年ほどと言われますが、ある意味当たっているのかもしれません。写真にあるようなサクラは植え替えの時期に来ている事は間違いなさそうです。

コフキサルノコシカケ

 14日の調査はほぼ1日がかりとなりました。お陰で、お盆休みにゆっくりと羽を伸ばすまでには至りませんでしたが、ご先祖様の供養も出来たし、美味しいものも頂けたし、それに、学校の樹木の現状もなんとなくではありますが分かったので、それなりに有意義な休日を過ごすことが出来と思います。

街路樹の診断2015/08/03 13:29

 梅雨が明けたとたんに、うだるような暑い日が続いていますが、この暑さの中福岡市で行われた街路樹の診断のお手伝いに行ってきました。
 場所は福岡市の大博通り、博多駅から港の方に伸びており、周辺はオフィスビルやホテルなどが建ち並ぶ福岡のメインストリートの一つです。
 今回の調査は歩道部に植栽されているケヤキが対象となります。熊本もそうですが、福岡でも街路樹として多く植えられており、尚かつ、これまでに倒木や枝の落下など樹木のまつわる事故の多くを引き起こしている要注意な樹木でもあります。

ケヤキ並木

 幹の部分を木槌で叩いても、空洞と思われるような音の変化は聞き取れなかったのですが、下の写真でも分かるように株元の部分にはベッコウタケの大きなキノコ(子実体)が発生しています。直径20センチ以上はあるでしょうか。

ベッコウタケ

 キノコを外してみると、着生していた部分の樹皮が白っぽく変色しているのが分かると思います。試しに先の尖った鉄の棒で突いてみると、その先端が幹の内部に食い込んでいきます。幹の部分はかなり腐朽が進行しているものと思われます。

ベッコウタケ除去

 そこで、どの程度腐朽が進行しているかを測定するために、音波の伝わり方の速度によって、腐朽部分を測る特殊な機械を用いました。
 まず、幹の周りに音の伝わる速度を測定する長方形をしたセンサーを12個程取り付けます。センサー直下の幹に金属製の釘状のものを軽く打ち込みます。このセンサーと釘とは線で結ばれています。釘の頭の部分を特殊なハンマーで叩く事によって発生する音が、どのように伝わるかを各々のセンサーで読み取る仕組みになっています。
 
ピカスセンサー取り付け

 測定結果は専用ソフトを介してパソコン上に画像として表されます。少し見にくいのですが、下の写真の青と紫の部分が腐朽した部分です。緑の部分は腐朽が疑われる部分、茶色は健全な材を表しています。測定の結果、空洞率は47%となり、今後、伐採を検討される値となりました。

 最初の写真では枝葉が茂り、健全に成長している樹木に見えるのですが、株元の方では予想外の腐朽が進んでいます。特にベッコウタケの場合、他のキノコと違って主に根株部分を腐朽させるので、一見健全に見えても樹木自体を支持する根が殆ど腐っており、少しの雨風でいきなり倒木という危険もある訳です。

 今回、使用した機械を上手く活用していけば、倒木などによる事故のリスクを減らす事が出来ると思います。しかし、この機械その特殊性からか非常に高価なもので、当然、診断料もかなり高くならざるを得ません。一路線の街路樹を全て機械による診断という訳にはいかないようです。基本的には我々樹木医が目視によってベッコウタケをいち早く発見し、その成長の度合いによって、このような精密診断を行うのか、伐採をするのかを判断できる技能を身につける事が大切なようです。

ピカス画像

 

秋の現地講座2015/07/14 08:54

 先日、Facebookでもご紹介した、NHKカルチャーの巨樹・古木を訪ねる現地講座の下見の続きです。

 Facebookでは城原八幡社まで紹介していましたが、秋の講座では長湯温泉にまで足をのばす予定にしています。その目的は長湯の町外れにある、籾山八幡社の巨木を訪ねるためです。長湯の温泉街から車で5分程度の場所にあります。途中、ダム湖の脇の道を抜けた先に集落があり、その集落を見下ろすような場所にあるのが、籾山八幡社です。日本書紀にその記述が見られる、景行天皇の土蜘蛛討伐の言い伝えを残す歴史のある神社です。

 まず最初に迎えてくれるのが、参道に植えられた杉の巨木です。幹周は5m以上、高さ30m以上は間違いなくあると思われる大杉が、狭い参道を挟んで植えられている姿は正に壮観です!

籾山八幡社 杉

 鳥居の遥か上の方まで枝を茂らせているので、参道はかなり薄暗く感じる程です。

 
 苔むした参道を中程まで進んでいくと、大ケヤキが姿を現します。
スギの直線的な樹形とは全く違って、大きく枝を横に張り出し幹が沢山のコブに覆われている姿は、薄暗い参道の中で怪しい程の存在感があります。

籾山八幡社 ケヤキ2

 近づいてみると、幹のウロになった箇所や枝の付根などから、榊やナンテンなど、沢山の樹木が着生しており、風格を感じさせる佇まいです。案内板によると幹周り9m程(コブの上)で九州第3位のケヤキの巨木とありますが、枝の屈曲やコブ、着生樹木の所為でしょうか、私の見た印象としては他の2本よりも重量感を感じます。

籾山八幡社 ケヤキ2

 階段を上りきった先の山門越しに振り返ると、違ったアングルからケヤキの姿を楽しむ事が出来ます。
 籾山八幡社は比較的小さな神社なのですが、ケヤキやスギの巨樹が作り出す独特の雰囲気が、ここを特別に神聖な場所にしているようです。
 講師として、今から皆さんをこの場所に案内するのが楽しみになって来ました。

籾山八幡社 ケヤキ3
 
 講座の開催は11月中旬頃、おそらく付近は紅葉の季節を迎えています。ケヤキやイチョウも色づいていて、今とはまた違った表情を見せてくれる事でしょう。
 多くの皆様のご参加をお待ちしております。

樹木にキノコ!2015/06/29 13:16

 とにかく雨続きの今年の梅雨にあって、昨日今日は貴重な梅雨の晴れ間となっています。九州南部では6月の降水量が平年の2倍以上にもなっているとか?人にとっては鬱陶しい日々ですが、このような湿度の高い状態を好む生き物もいます。
 そんな生き物の中のひとつがキノコなのです。元々、キノコは材質腐朽菌といって枯れた樹木を分解して速やかに土壌に返す重要な働きをしています。しかし、キノコの中には生きた樹木の根っこに寄生して樹木を枯らしてしまったり、倒木などを引き起こす毒性の強いものもいます。
 その、代表的なものが下の写真に見られる。ベッコウタケと呼ばれるキノコです。

公園のキンモクセイ

 上の写真は我が家の近所にある児童公園のキンモクセイです。遠くから見る分には「少し葉っぱの量が少ないかな?」と感じる程度でさほど気に留めるような事も無いのですが、近づいて根の当たりを見てみるとご覧の通りです。

キンモクセイ ベッコウタケ

 根元周辺に黄色がかったクリーム色のキノコがびっしりと張り付いています。キノコといってもシメジやシイタケの様に柄があって傘が開いているというものではありません。最初はコブ状の塊が現れ、成長するに従ってサルノコシカケの様な形へと変化していきます。11月頃になると、焦げ茶色に変色して活動は一旦収束しますが、次の年の6月頃から活発に活動を開始します。名前の由来はベッコウ色をしているからでしょうか?
 繰り返しになりますが、このキノコの特徴としては樹木の根を腐朽させるということです。ですので、毎年夏場に多く報告される樹木の倒木による事故の主な原因と考えられ、非常に危険なキノコでもあります。
 しかし、残念なことに、樹木を活かしたままキノコ(材質腐朽菌)だけを殺すことは不可能です。キノコとして我々が見ている部分は材質腐朽菌の生殖器官として胞子を飛ばす役割を果たしています。バラの木で例えれば花に当たる部分なのです。養分吸収器官である枝葉や茎、根に当たる部分は菌糸と呼ばれ、樹木の内部に広がり組織を分解しているのです。バラの花を一生懸命に摘み取っても生育自体にはさほど影響がないのと同様に、キノコ自体を取り除いて、そこに殺菌剤を塗ってもあまり意味のないことなのです。

ケヤキのベッコウタケ

 上の写真は2013年の7月に、このブログでも紹介した熊本市内某公園内のケヤキです。管理者には伐採を勧めたのですが、キノコを削って殺菌剤と強化剤の塗布の処置が施されただけでした。その後の様子が気になっていたのですが、先日久しぶりに前を通ってみたら、以前ベッコウタケが生えていた同じ場所に再度発生していました。

 近づいてみると10㎝〜5㎝程の大きさのキノコが根元に3箇所ほど見られました。これから、夏場にかけてさらに成長するものと思われます。

ケヤキ ベッコウタケ2

 補強のためでしょうか、杉丸太で支柱が設置されています。しかし、幹周が3m程度、樹高15m程もある大きな樹木を支えるには如何にも貧弱な気がします。キノコの成長を伺いながら、管理者の方には伐採を含め適切な処置をとるように働きかけたいと思っています。

ケヤキ

 これから10頃にかけてはベッコウタケが成長する時期になります。上の写真でも分かるように、枝葉はよく伸びて健全そうに見える樹木でも根元にベッコウタケが発生している場合が多くあります。特に公園や街路樹で見られるケースも多いので、特に注意が必要と言えます。もし、見かけたら公園や道路の管理者への報告をお願いいたします。

ケヤキ並木の倒木

 上の写真は、7年前に菊池郡大津町の国道で起きたケヤキの倒木事故の写真です。この原因も根元に発生したベッコウタケによるものでした。ひとつ間違えれば大事故になりかねなかった事例です。このような倒木事故が起きないように、今後は樹木の点検も重要な業務となっていくと思われます。
 

 

ジャカランダの花2015/06/08 08:51

 最近、花の話題が多いのですが、今回も花の話題です。ただ、今回ご紹介する花は日本原産の樹木でありませんが、日本の暖かなごく限られた場所で植えられています。ジャカランダという名前をお聞きになった方はいらっしゃるでしょうか?いかにも熱帯という雰囲気の名前の通り、南米ブラジル原産のノウゼンカズラ科の落葉樹です。
 今、お隣長崎県の島原半島にある小浜温泉でジャカランダ祭りが開催されているという事で、早速、フェリーに乗って行ってきました。


熊本フェリー

 熊本港から高速フェリーで30分、波静かな有明海を一またぎして長崎県の島原港に到着です。下船後、早速、目的地の小浜温泉に向かいます。途中、雲仙の山々を越え、観光地として有名な雲仙温泉街から立ち上るイオウのにおいに心引かれつつも、坂道を一気に下って小浜温泉に到着しました。熊本市内から2時間少々で着いてしまいました。

小浜温泉ジャカランダ

 橘湾に面した温泉街の国道沿いに街路樹としてジャカランダが植えてあります。青紫の独特の花色が印象的で、いかにも南国ムード漂うという感じです。ただ、花を咲かせている木は全体の2〜3割程度で、その花も5部咲きといったところでしょうか?花を眺めていると、花の写真を撮りにこられたのでしょう、一眼レフカメラを持った人に「今年は開花が遅れているみたいだけど、この先に沢山花を付けている場所があるよ。」と教えていただいた所まで歩いてみました。

ジャカランダ並木

 確かに、温泉街の前よりも上の写真の場所の方が花付きが良いのですが、それでも、まだこれからという感じで、つぼみがついているのと、そうでないのがはっきりしている様子です。帰ってからネットで調べてみたのですが、ここもジャカランダの植栽値として有名な宮崎県日南市でも、今年の花付きは今ひとつという事が書いてありました。南米生まれでラテンの血が入っているから花付きも気まぐれということなのでしょうか…?

ジャカランダの花

 花は桐の花に似ているような気がしますが、とにかく鮮やかな青紫色で一目を引きつける花です。ブドウの房のようでもあります。葉っぱは、熱帯・亜熱帯地方にあるヘゴやシダの葉っぱそっくりでエキゾチックな雰囲気を漂わせています。

 ジャカランダが植えられている街路は海沿いの道で、とても気持ちのいい場所です。今度、機会があればこの木下をジョギングなんかして、後は、小浜温泉にゆっくり浸かって汗を流し、おいしい海の幸に舌鼓をうつ、なんて事が出来ればと思う次第であります。

平成新山

 帰り道は同じコースを通って、島原の道の駅「みずなし本陣」に立ち寄りました。ここは、かつて雲仙普賢岳の大火砕流後の土石流被害で、多くの家屋が埋没した地点でもあります。今も、1階の屋根付近まで土砂に埋もれた家屋が保存展示されており、土石流の凄まじさを実感できます。上の写真は駐車場から写した平成新山です。普賢岳付近に出来た溶岩ドームが成長して出来た新しい山で、日本で一番新しい山だそうです。
 島原半島は雲仙火山の影響で至る所から温泉が湧き出し、雲仙温泉や小浜温泉など古くから温泉街として栄えいます。また、その地熱の影響で、本来日本では生育が難しいとされる熱帯性のジャカランダなども立派に育っています。今、各地で火山活動が活発化し、周辺住民の方も不安に思われている事でしょう。この雲仙の山も、今後もずっと穏やかであり続けてもらいたいものです。

 



白い花2015/06/04 17:39

 今月の14日(日曜日)に熊本市動植物園で開催される、緑の講座の下準備に園内を訪ねた時に撮った写真です。花径10センチ程の白い花をうつむきかげんに咲かせています。花芯の紫と純白の花びらがとても印象的です。ご存知の方もおられると思いますが、オオヤマレンゲの花です。
 
オオヤマレンゲ

 オオヤマレンゲという名前は、奈良県南部の大峰山に自生しており、ハスの花(蓮華)に似た花をつける事に由来しているそうです。九州でも標高1000m程の高い山に自生し、阿蘇でも見られるそうです。梅雨入りしたてのうっとうしい季節に、何とも心を和ませてくれるような透明感のある花です。
 ちなみに、モクレンの仲間の落葉中高木で樹高が3m〜5mになるそうです。高山の樹木という事ですが、熊本市動植物園では毎年奇麗な花を楽しめるそうです。
 
 もうひとつ、準備を終えて帰る時に気になった花がありました。どこからともなく漂ってくる濃厚な花の香り、そうですクチナシの花です。こちらも白い清楚な花を膝丈程度の高さでうつむくように咲かせています。皆さんにはおなじみですよね!庭の片隅や、公園なんかの少し影になるような場所に植えられているのをよく見かけます。この花の香り、私は香水のような匂いがしてとても好きなのですが、皆さんは如何でしょうか?

クチナシ

 この2つの花はとても奇麗なのですが、あいにく花持ちがあまりよくありません。せいぜい3日程で茶色く萎んでしまいます。アジサイの花は別として、気温の上昇とともに、これから盛りを迎える花は命が短いという傾向にあるようです…。

桐の花2015/05/11 09:37

 少し前の話ですが、国道沿いを車で走っていたら道ばたに藤色の花を咲かせた樹木を見かけました。てっきり、藤が他の樹木に巻き付いているのだろうと思っていたら、花序が上を向いて出ています。気になったので脇道に車を停めてみて見ると、高さ10メートル程の桐の木が3本程立っていました。おそらく、実生でここに育ったものだと思われます。

桐の木

 桐と言えば桐のタンスが有名です。成長が早く材がとても軽いので、軽さが要求されるタンスの材料として古くから栽培されていたようですが、最近では家具の需要の落ち込みとともに日本で栽培される事は殆どなくなったとの事でした。ですので、今見られる桐の木は殆どが実生の可能性が高いと思われます。

 もう一つ桐で思い浮かぶのは豊臣秀吉の紋章でおなじみの五七の桐ではないでしょうか?日本政府の紋章としても使われており、首相が演説をする際の台には五七の桐があしらわれています。
 そこで、私もどうにかして桐の紋章のような写真を撮ろうと思ったのですが、花序につく花の数が多すぎて上手く行きません。やっぱり紋章というのはカッコイイように図案化したものなのですね。

桐の花2

 花は上向きに咲いており、枝の先端に集まっているので遠くからは分かりにくいのですが、近寄ってみるとかなり大きな花です。一つの花径が5〜6センチ以上もあるでしょうか。藤のような良い香りがするかと鼻を近づけてみたのですが、残念ながらあまり香りはしませんでした。

桐の花1
 
 九州ではサクラの季節はとっくに終わってしまいましたが、今回紹介した桐の花や栃の花など、樹木の花の季節はまだまだ続きます。サクラのような華やかさはないのですが、次第に蒸し暑くなってくるこの季節に、清涼感を与えてくれるような花ばかりです。是非、皆さんも公園の樹木や街路樹などを足を止めて眺めてみてください。

三池炭鉱万田坑2015/05/08 10:37

 ここで紹介している樹木の話題とは関係ないのですが、先日5月5日の子供の日に帰省中だった娘をつれて万田坑見学に出掛けたことについてお話をしたいと思います。
 この日は坑内が無料で解放される日だと前もって知っていたので、見学に行く予定にしていたのですが、前日の夜のニュース速報を見てビックリ!世界遺産への登録が勧告されたとの事で、初めて行く万田坑への期待感も高まります。
 万田坑のある熊本県荒尾市までは熊本市内より車で1時間程でしょうか。目的地に近づくにつれて車が増え、道案内をする誘導員が出ています。さすが、「世界遺産先取りをと考える人はいるのだな。」と思っていたら、それはお隣にある遊園地への車の誘導のための人たちでした。しかし、専用の駐車場はほぼ満車状態、とにかく車を停めて、まずは資料が展示してある万田坑ステーションに足を運びました。ここでは万田坑の歴史を学ぶビデオの上映の他、当時の鉱山全体を復元した模型や写真の展示がされており、この鉱山のスケールの大きさや三池炭鉱が日本の近代化に果たした役割の大きさを実感できました。

 ステーションを出た後、いよいよお目当ての万田坑へと向かいました。ここではボランティアガイドの方の説明を聞きながら、最初に、シンボルとなっている第二竪坑巻揚機室内や第二竪坑櫓を見学します。

第二巻揚機室及び竪坑櫓

 県の観光パンフレットでこの姿は見ていたのですが、近づいてみると思っていたよりずっと大きく、重厚感があります。
 下の写真はこの第二竪坑の坑口です。ここから炭鉱内にエレベーターで炭坑労働者の人たちを降ろしたり構内に流れ込んだ水を排水していたそうです。ボランティアの方が言ってたのですが250m以上も深い場所にある鉱脈まで垂直に降りていったのだそうです。

第二竪坑坑口

 巻揚機室内はヘルメット着用です。大きな巻揚機は多くの人たちの命綱として、日夜上げ下げを繰り返していたのでしょう。説明のボランティアの方の話にも熱がこもっていたように感じます。

巻揚機室内

 巻揚機室内を出た後、浴室や脱衣所を見学して石炭を選り分けていた選炭場跡と呼ばれる広々とした場所に出てきました。昔は石炭を品質によって選り分け、貨車に積み込んで三池港まで運んでいたそうです。
 下の写真は選炭場跡の脇にあった水路沿いに第二竪坑櫓と巻揚機室を撮影したものです。

第二竪坑櫓及び巻揚機室

 最盛期には万田坑だけで3500人程の人達が炭坑労働者として働いていたそうです。荒尾・大牟田地区に点在した三池炭鉱全体ではどれだけの人たちが働いていて、街もどれだけの賑わいを見せていたのでしょうか?この施設は石炭採掘が終了した後も、他の炭坑へ水が流れ込むのを防ぐため排水施設として平成9年の三池炭鉱閉山まで現役で活躍し続けたという事でした。そのために施設が取り壊される事なく、今にその姿を止めているとの事。
 

第二竪坑と貨車

 坑内には錆びた線路や貨車、重機などがそのまま残っています。錆びてはいるものの、その重厚な存在感は、かつて多くの人々が額に汗して働いていた当時の様子を想像させるには十分の説得力があります。

メーター類

   7月の審査を経て、正式に世界遺産として登録されるとのことですが、私も是非もう一度訪ねてみたいと思います。想像していたより見どころ満載で、ボランティアガイドをしていただいた30分ではとても足りないくらいでした。なので、私たち家族はガイドが終了した後も建物の周りをうろうろして色んな角度から、櫓や巻揚室を眺め、1時間以上は坑内にいたでしょうか?とても充実した時間でした。




センダンの花2015/05/01 11:16

 昨日、お昼休みに会社の近所の川沿いを散歩していたら、花を咲かせたセンダンの木を見つけました。わざわざ人の手で植える事はあまりない木なのですが、熊本ではこのように川沿いの土手などで実生のものが普通に見られます。きっと九州の温暖な気候が適しているのでしょう?

センダン

 花は新しく伸びた枝の根元の部分につき、小さい花が集まって咲くので比較的目立ちません。しかし、満開の頃になると枝が薄紫に覆われ、涼やかな雰囲気を与えてくれます。
 もしや良い香りがするのかと思い、鼻を近づけてみたのですが殆ど匂いらしい匂いはしませんでした。
それもそのはず、ことわざにある「センダンは双葉より芳し」のセンダンとはインドなどでよく見られる白檀(ビャクダン)の事だそうです。昔は白檀をセンダンと言っていたらしいです。どうしてこのような混同が起こったのかは不明でした。

センダン花

 センダンの木をよく見てみると、どこにでもあるような平凡な大きさと、その姿ですし、人を引きつけるような良い香りもありません。そんな、人並みはずれたところがなく平凡な木だからこそ、街の中でも逞しく生き続けていられるのかもしれませんね。