樹木にキノコ!2015/06/29 13:16

 とにかく雨続きの今年の梅雨にあって、昨日今日は貴重な梅雨の晴れ間となっています。九州南部では6月の降水量が平年の2倍以上にもなっているとか?人にとっては鬱陶しい日々ですが、このような湿度の高い状態を好む生き物もいます。
 そんな生き物の中のひとつがキノコなのです。元々、キノコは材質腐朽菌といって枯れた樹木を分解して速やかに土壌に返す重要な働きをしています。しかし、キノコの中には生きた樹木の根っこに寄生して樹木を枯らしてしまったり、倒木などを引き起こす毒性の強いものもいます。
 その、代表的なものが下の写真に見られる。ベッコウタケと呼ばれるキノコです。

公園のキンモクセイ

 上の写真は我が家の近所にある児童公園のキンモクセイです。遠くから見る分には「少し葉っぱの量が少ないかな?」と感じる程度でさほど気に留めるような事も無いのですが、近づいて根の当たりを見てみるとご覧の通りです。

キンモクセイ ベッコウタケ

 根元周辺に黄色がかったクリーム色のキノコがびっしりと張り付いています。キノコといってもシメジやシイタケの様に柄があって傘が開いているというものではありません。最初はコブ状の塊が現れ、成長するに従ってサルノコシカケの様な形へと変化していきます。11月頃になると、焦げ茶色に変色して活動は一旦収束しますが、次の年の6月頃から活発に活動を開始します。名前の由来はベッコウ色をしているからでしょうか?
 繰り返しになりますが、このキノコの特徴としては樹木の根を腐朽させるということです。ですので、毎年夏場に多く報告される樹木の倒木による事故の主な原因と考えられ、非常に危険なキノコでもあります。
 しかし、残念なことに、樹木を活かしたままキノコ(材質腐朽菌)だけを殺すことは不可能です。キノコとして我々が見ている部分は材質腐朽菌の生殖器官として胞子を飛ばす役割を果たしています。バラの木で例えれば花に当たる部分なのです。養分吸収器官である枝葉や茎、根に当たる部分は菌糸と呼ばれ、樹木の内部に広がり組織を分解しているのです。バラの花を一生懸命に摘み取っても生育自体にはさほど影響がないのと同様に、キノコ自体を取り除いて、そこに殺菌剤を塗ってもあまり意味のないことなのです。

ケヤキのベッコウタケ

 上の写真は2013年の7月に、このブログでも紹介した熊本市内某公園内のケヤキです。管理者には伐採を勧めたのですが、キノコを削って殺菌剤と強化剤の塗布の処置が施されただけでした。その後の様子が気になっていたのですが、先日久しぶりに前を通ってみたら、以前ベッコウタケが生えていた同じ場所に再度発生していました。

 近づいてみると10㎝〜5㎝程の大きさのキノコが根元に3箇所ほど見られました。これから、夏場にかけてさらに成長するものと思われます。

ケヤキ ベッコウタケ2

 補強のためでしょうか、杉丸太で支柱が設置されています。しかし、幹周が3m程度、樹高15m程もある大きな樹木を支えるには如何にも貧弱な気がします。キノコの成長を伺いながら、管理者の方には伐採を含め適切な処置をとるように働きかけたいと思っています。

ケヤキ

 これから10頃にかけてはベッコウタケが成長する時期になります。上の写真でも分かるように、枝葉はよく伸びて健全そうに見える樹木でも根元にベッコウタケが発生している場合が多くあります。特に公園や街路樹で見られるケースも多いので、特に注意が必要と言えます。もし、見かけたら公園や道路の管理者への報告をお願いいたします。

ケヤキ並木の倒木

 上の写真は、7年前に菊池郡大津町の国道で起きたケヤキの倒木事故の写真です。この原因も根元に発生したベッコウタケによるものでした。ひとつ間違えれば大事故になりかねなかった事例です。このような倒木事故が起きないように、今後は樹木の点検も重要な業務となっていくと思われます。
 

 

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