巨樹・古木現地講座 ― 2014/11/15 08:51
先日の13日(木曜日)に、このブログでも事前に紹介していました現地講座に言ってきました。前日からの天気も回復して受講者の皆さんも雨に濡れるような事はなかったのですが、冬型の気圧配置がもたらす北風の寒い一日となりました。しかし、そこは出かけ慣れた皆さんの事、この日の天候に合わせて防寒対策バッチリで、元気よく見学をされています。
下の写真は最初の見学地、遠賀川流域の福岡県遠賀郡水巻町にある八劔神社の大銀杏です。10月下旬に下見に来た時よりもかなり黄葉が進んでおり、上の方の枝では葉が落ちているものも見受けられます。
この地には日本武尊(ヤマトタケルノミコト)と砧姫の伝説が残っており、このイチョウも、そのお手植えという言い伝えもあります。また、この木にはイチョウ特有のちちこぶが見られることから「母乳の出が良くなりますように。」と祈願をする人たちで昭和30年代頃までは賑わったそうです。
上の写真がその「ちちこぶ」です。昔の人は、この丸い房の様な形が女性の乳房に似ていることから、この「ちちこぶ」の皮を煎じて飲むとお乳の出が良くなると言う風習があったそうです。今でもこのような信仰はあるのでしょうか?
最近まで、ちちこぶは他の樹木に見られる気根の一種だと考えられていました。しかし、他の樹木の気根のように空気中の水分を吸収したり、樹体が倒れないように支えたり、或いは、湿地帯で酸素不足の解消のために酸素を吸収したり、という働きはないそうです。今では、茎の下側の部分が変形したものだという見解で。その働きについてはよく分かっていません。いずれにしても、太古の恐竜時代から存在するイチョウの不思議な生態の一つです。
下の写真は2番目の見学地、芦屋町の岡湊神社です。ここでは、宮司さんに日本三大ソテツの一つに数えられる大ソテツの解説を依頼していたのですが、話のほぼ9割以上が神社の成立ちと、伊万里から送られたという立派な石灯籠の話になっていました。大変熱心に話をしていただきありがとうございました。
この写真の後に私からソテツに関しての話題を、少しだけにさせていただきました。(汗)
昼食後に尋ねたのは、宮若市の山懐にある清水寺(せいすいじ)のビャクシンです。写真の山門の右に写っているのがビャクシンの木です。樹木の大きさもさることながら、ビャクシンと山門、下に流れでる滝が一つの素晴らしい景観をなしています。なかなか渋い眺めです。
山門の下から振り返ると御覧の様な風景が楽しめます。
ここは福岡県では珍しい雲海の名所だとか、ただ訪れた時間が午後2時を過ぎていたので、素晴らしい雲海にお目にかかることは出来ませんでした。
境内には大きなモミジの木もあったので、もう少し季節が進めばさらに鮮やかな風景も楽しめることでしょう?
最後の見学地は糟屋郡宇美町にある宇美八幡宮の楠の巨木です。境内には沢山のクスノキがありますが、中でも「湯蓋の森」「衣掛の森」と呼ばれる2本は別格の存在感があり、大正時代にはすでに国の天然記念物に指定されています。
この地は応神天皇が生まれた場所とされており、宇美八幡の境内で産湯を使われた際に、その産湯の上に天蓋のように枝を伸ばしていたことから「湯蓋の森」また、産湯に浸かる際に衣をその枝にかけたことから「衣掛の森」という名前がついたそうです。森とは1本で森のように枝が繁っていることから付けられた呼び名です。
下の写真は「衣掛の森」です。
幹のかなりの部分が空洞となり、一部の樹皮が剥がれているにもかかわらず、なお衰えを知らない巨木を前に、皆さん感嘆の声をあげたおられました。このクスの巨木には圧倒的な力感を感じます。
この後、九州道を通って無事熊本に帰ってきました。皆さん寒い中、私の拙い解説を熱心に聞いていただき大変有難うございました。来春はサクラの季節に、どこか九州の素晴らしい樹木と自然に出会えるように考えていきたいです。
クスノキ土壌改良 ― 2014/11/27 08:25
今年7月の記事でも紹介しました衰弱したクスノキ、調査を行い、管理者である市に報告を行ったところ、樹勢を回復するための処置を行う事になりました。
下の写真は夏に撮ったものですが、葉っぱもボリュームも少なく、枝の先端が衰弱して枯れているのが分かります。
以前行った調査で土壌環境が悪くなったために、衰弱しているという報告はしましたが、今回の処置では硬くなった周辺の土壌を柔らかくして、深植え状態による酸素不足を解消する事を目標としました。
そこで、まず行ったのが根の周囲の硬く固まった土を取り除く作業です。ショベルで一気に土を掘ってしまうと根を痛める恐れがあるので、エアースコップという特殊な機械を用い、根の周辺の土を圧搾空気で吹き飛ばしながら掘り進めていきます。
この作業は端から見ているより結構大変です。吹き飛ばされた土や小さい石ころが自分の方にも跳ね返ってきます。
深さ80センチ程まで掘って、通気を良くするための資材を敷設します。白い筒の中は軽石状の改良材が入っています。これを垂直方向と横方向に何本も設置していきます。
次は土の埋め戻しです。元からあった土は殆どが山砂で、そのまま埋め戻しても元の様に固まってしまいます。そこで、付近の山から肥沃な黒土を搬入し、これに有機質と木炭を砕いた無機質の改良材を混ぜて埋め戻していきます。
この作業においても、せっかく立てて固定した改良材の筒が倒れないように支えておくのに一苦労しました。
最後は、活力剤を混ぜた水をたっぷりと潅水して作業の終了です。このとき、使った水は全部で8000ℓあまり、このように大量の水で潅水する事によって、土とクスノキの根との間の隙間がなくなるように土を流し込みます。
因みに、土壌の表面に見える黒くて丸い小さなものは、敷設した筒が土に埋もれてしまわないようにするためのプラスティック製の蓋です。
今回、改良を行ったのは直径10m程のコンクリート製のサークルベンチの中のみです。来春の様子を見ながらではありますが、今後はベンチの外側の非常に硬い山砂舗装の部分の改良を検討する必要がありそうです。
来年の春の新緑の時期に沢山の葉が元気よく展開してくれる事を期待します。