落ち着かない場所?2009/08/03 14:08

実は私、NHK文化センターの主催で“樹木医と行く巨樹・古木めぐり”という現地講座の講師をしています。

今度の講座の予定日は11月20日となっており、先日、下見を兼ねて人吉・球磨方面に一人で行ってきました。

上がその時に撮影した一枚です。湯前町の城泉寺の阿弥陀堂を写した写真。この御堂の写真右側奥の林の中に熊本県でも最大と思われるコウヤマキの巨木があります。幹の途中で二股に分かれてまっすぐに伸びてる素晴らしい樹木です。

城泉寺自体も鎌倉時代初期に建立された県内最古の木造建築物で中に安置されている阿弥陀如来像は国宝に指定されているくらい由緒あるお寺です。

しかし、お寺の敷地内に入った時から、どこか胸のあたりがザワザワとする様な不安な気持ちになっていました。そして、写真には写ってませんが、御堂の向かって左側には墓地を挟んで2階建てと思しき納屋があります。
不安な気持ちを振り払おうとそちらを振りむいた瞬間、何十羽もの茶色の鶏が目をむいて私のことを見ていたんです。思わず腰を抜かしそうになりました。(汗)
そして、怖いもの見たさではありませんが、怖怖もう一度振り向いてみたら、単に玉ねぎが皮付きのまま干してあったにすぎませんでした。
玉ねぎを鶏と見間違うほど気持ちが不安定になっていたのかも知れません。

自分は霊感や心霊体験などは全く信じていませんでしたし、仕事がらこれまでも一人で林や神社の境内の樹木調査に行く機会もありました。
しかし、一度も今回のような気持になったことはありません…。

今度の講座でここを訪れるのは止めにしようと考えています。皆さんに樹木の素晴らしさを冷静なまま解説するのが不可能だと思うからです。

湯前町の方、御寺を守っておられる方大変申し訳ありません。
(南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀…。)

梯子でも届かない場合は2009/08/06 08:37

高所作業車(トラックにリフトを付けたもの)を用いて作業を行います。また、写真のように梯子を立てると通行の支障になる様な道路沿いの街路樹剪定作業などではとても便利な機械です。この機械、造園の作業では主に樹木の剪定の際に用いますが、電気屋さんが電線を引っ張ったり、看板屋さんが看板を設置したり、その便利さもあってか、いろんな職種の職人さん御用達の機械となっています。
だからリース屋に早めの予約を入れておくことが肝心なのです。(笑)

用途によってリフトの高さが選べます。12m程のものと24mくらいまで届くものがあります。因みに写真は12m級の機械です。
私も5年ぶりくらいに24mのゴンドラに乗って、熊本県営野球場(藤崎台球場)のクスノキの調査をしたのですが、現地が高台になっており熊本市内が遥か下方に見渡せて、額と背中に冷たい汗をかいてしまいました。(トホホ…)

松枯れ…2009/08/12 18:17

写真は所謂、マツクイムシの被害にあったクロマツの様子です。
一昨日、会社に出てみると、この御宅の奥様から朝一番で電話がかかってきて「うちの門掛りの松の木の様子がおかしいから、とにかく見に来てちょうだい。」と言われるので、わたくし自ら駆けつけました。
そしたら…。全体的に葉の緑が失われてて、明らかにマツクイムシの被害にあった時の症状でした。そこで、奥様には「これはマツクイムシの被害です。100%とは言いませんがおそらく枯れてしまいます。」とお伝えして力なく会社に戻ってきました。

この御宅150坪ほどの日本庭園ですが、当社が20年ほど前に庭作りを行い、以来、年二回の剪定作業や消毒等を行っているお庭で、その中でもメインの樹木の一つでした。この話を伝えるとうちの社員も残念そうにしていました。(トホホ…)

マツクイムシと聞くと皆さんはそんな名前の毛虫か昆虫がいるのだと思われる方が殆どですが、実際そんな虫はいないのです。
正式にはマツノザイセンチュウという名前の1㎜足らずの線虫の一種です。線虫という名前のとおりミミズのような形をしたチンケな生き物ですが、植物や動物の体内に寄生して生きているなかなか狡賢い奴でもあります。人の内臓に寄生する回虫やサバの肉の中に寄生して、人が生でサバを食べると、たまにですが、胃に激痛が走るのもアニサキスという線虫が人の胃袋の中で暴れるせいです。(冷汗)

マツノザイセンチュウはマツノマダラカミキリという昆虫の体内に寄生して松の木の所に運ばれて来ます。そしてこのカミキリが松の梢をかじった際にその傷口から松の中に入り込んで、樹脂道と呼ばれるマツヤニの通る場所を内側から破壊して、マツヤニの循環をストップさせ、最後には枯らしてしまいます。そして、この枯れた松の木に雌のマツノマダラカミキリが卵を産み付けます。やがて孵化し、ヤニが出なくなって居心地が良くなった松の枯木を餌に幼虫はすくすくと育ちます。そして、成虫となり松のねぐらを出ていく時にはその体内に線虫が沢山寄生しているというからくりです。

お客様の大切な松の木に限らず、日本全国の美しい松原を卑劣極まりないやり口で食いものにしているけしからん奴です。(怒)

しかし、現状ではマツノザイセンチュウのみを駆除する有効な手立ては無いのが現状です。松の木に向かって飛んでくるマツノマダラカミキリを薬剤散布によって防除する方法しかありません。(涙)

わずか1週間で…2009/08/19 09:05

先日お伝えした松枯れの続報です。
写真をご覧のとおり、完璧に枯れています。つい1週間前までは下枝が茶色になりかけており、全体的に緑が薄くなった程度でした。しかし、わずか1週間で変わり果てた姿になってしまいました。

御家の方はかなりがっかりされていましたが、私どもとしても打つ手はなく、ただ、枯れて行く姿を見守るしかありませんでした…。(合掌)

特に最近は山の森林だけではなく、海辺の松林にも人の手が入らなくなったせいか、松枯れが特に目立つような気がします。天草の松島や桜島なんかもかなり危機的な状況ではないかと思います。
やっぱり、人が植林して長い間手を掛けてきたものは、それなりに人の手を入れてやらないと良くはならないんでしょうね?

それから、これは私の推測でしかありませんが、地球温暖化の影響でカミキリ虫など昆虫の活動が活発化していることも一因かも知れません。

キャンパス内はキノコ天国2009/08/25 15:53

先日、熊本市内K大学の関係者より、「樹木の枝が落ちて駐車中の車を損傷する事故が数件発生しました。今後、事故を起こさない為に枝の剪定作業を行いたいので、一度見に来てくれませんか?」という連絡を受けました。すぐにK大構内を見回った時に撮影した写真がこれです。

枯れたヒノキにシックイタケとおぼしきキノコが発生している様子が分かります。

キノコは普通、枯れた樹木やその死んだ組織に発生して、樹木を腐らせて土に還す働きをしています。この事は山の中や林の中等の自然界では大変重要な働きだと言えます。仮にキノコのような菌類がいなければ、山や森の中では枯れた樹木がそのまま残ってしまい、森の中は枯れた樹木や植物の墓場のようなありさまになってしまいます。言い換えれば、樹木や植物を見事にリサイクルしているのです。

しかし、今回のような大学の中や都市の街路樹、公園などでキノコが活発に活動してしまうと、かなり危険なことが待ち受けています。
それは、今回のように枯れて腐った枝が上から落ちてきたり、あるいは、通りかかった道路で突然街路樹が倒れてくるなどの事故の可能性が非常に高まるのです。
実際、今日もあの有名な仙台市のケヤキ並木の一本が突然倒れて道路を塞いだというニュースを全国版で放送していました。おそらく腐朽力の強いキノコの仕業だと考えられます。

明治の頃よりの伝統のあるK大には植栽したものや、自然に生えてきたものも含め数多くの樹木があり、緑のボリュームは豊だと言えます。しかし、今回、見て回った結果、人の手が入らない区域では、かなりの数の樹木がキノコに侵されており、倒木や枝が落ちる危険があるという事実を痛感しました。
大学側も校舎の建て替えや、ITシステムの入れ替えには熱心らしいですが、庭のメンテナンスには手が回らないのが現状だと担当者の方も嘆いておられました。

学内は丁度オープンキャンパスの時期で制服姿の高校生も多く見受けられました。より優秀な学生に多く入学してもらうためにも、まず、構内の安全を確保すること、そして、手入れの行き届いた美しいキャンパスに変えて行く事が重要だ!などとひとり考えているのですが…。