危険なキノコ ― 2010/07/05 11:06
今日の午前中、熊本市内にある江津湖という湖横の駐車場に車を止めて、街路樹の様子をみていたところ、その駐車場にあるソメイヨシノに危険なものを発見しました。
ソメイヨシノの株元に発生したベッコウタケ
それは、根元付近を1周するように5~6か所程確認出来ました。これはベッコウタケと言うキノコの仲間です。通常キノコは木材腐朽菌と言って枯れた樹木や、生きた樹木の中の死んだ組織である木材を分解して土にかえすという大変重要な働きをしています。しかし、このベッコウタケやナラタケと呼ばれるキノコは木材だけではなく、生きた組織に侵入して、樹木を衰弱させたり、枯死に至らせる性質を持っています。さらにベッコウタケの厄介な点は樹木の根を腐らせる働きが強いという事です。
近年、街路樹のケヤキが突然倒れて車に当たり、ドライバーの方が間一髪で人身事故を免れたとか、元気だったはずの神社の御神木のイチョウが突然倒れたとニュースを良く目にしますし、自分自身も事故後の検証に呼ばれた事があります。そこで、ほぼ100%と言っていいほど目にするのがこのベッコウタケです。もちろん、根に傷もなく健康な樹木に発生する事は殆ど考えられません。しかし、道路工事をした際に歩道の下に伸びている根を切断したような場合、或いは、台風等の強風の影響で樹木が大きく煽られて、根が傷つけられた場合などに、傷口から土壌感染という経路で菌が進入してくるのです。全国各地で街路樹のすぐ横を掘削しての道路工事や電線地中化工事が行われています。樹木の根を切断する際には綺麗な断面が出来るように行い、傷口には丁寧に殺菌剤を塗布するなどの処置が必要です。倒木が起きれば、道路は通行止めになりますし、通行量の多い街路では人身事故にも繋がりかねません。街路樹がある道路を掘削する場合には、事前に私達樹木医に一度相談をいただければ何とかなるかも知れないのですが…。
それは、根元付近を1周するように5~6か所程確認出来ました。これはベッコウタケと言うキノコの仲間です。通常キノコは木材腐朽菌と言って枯れた樹木や、生きた樹木の中の死んだ組織である木材を分解して土にかえすという大変重要な働きをしています。しかし、このベッコウタケやナラタケと呼ばれるキノコは木材だけではなく、生きた組織に侵入して、樹木を衰弱させたり、枯死に至らせる性質を持っています。さらにベッコウタケの厄介な点は樹木の根を腐らせる働きが強いという事です。
近年、街路樹のケヤキが突然倒れて車に当たり、ドライバーの方が間一髪で人身事故を免れたとか、元気だったはずの神社の御神木のイチョウが突然倒れたとニュースを良く目にしますし、自分自身も事故後の検証に呼ばれた事があります。そこで、ほぼ100%と言っていいほど目にするのがこのベッコウタケです。もちろん、根に傷もなく健康な樹木に発生する事は殆ど考えられません。しかし、道路工事をした際に歩道の下に伸びている根を切断したような場合、或いは、台風等の強風の影響で樹木が大きく煽られて、根が傷つけられた場合などに、傷口から土壌感染という経路で菌が進入してくるのです。全国各地で街路樹のすぐ横を掘削しての道路工事や電線地中化工事が行われています。樹木の根を切断する際には綺麗な断面が出来るように行い、傷口には丁寧に殺菌剤を塗布するなどの処置が必要です。倒木が起きれば、道路は通行止めになりますし、通行量の多い街路では人身事故にも繋がりかねません。街路樹がある道路を掘削する場合には、事前に私達樹木医に一度相談をいただければ何とかなるかも知れないのですが…。
ベッコウタケの子実体(キノコ)
皆さんが目にする、いわゆるキノコは木材腐朽菌全体でいえば胞子を飛ばす為の生殖器官に過ぎません。例えが少し変ですが、バラの花に当たる部分です。根っ子や葉っぱといった養分を吸収する器官は菌糸と言って樹木の内部に大きく広がっているのです。だから、いくらキノコだけを切除して、その個所に殺菌剤を塗布しても単に花を摘んでいるにすぎず、木材腐朽菌の生育には殆ど何の問題も無いのです。言い換えれば、キノコを幾ら取ってあげても樹木の内部で進んでいる腐朽は止まらないし、残念ながら、この腐朽を停めるような方法も現在の所見つかっていないのが現状です。
前段でも言った通り、樹木や植物の死体を分解して土にかえすという働きは、自然界では大変重要な働きであり、キノコは自然界に無くてはならない存在なのです。もし、キノコが無かったら森は枯れた樹木で覆われてしまい、新しい生命が育ってゆく場所ではなくなってしまいます。
しかし、街路樹に生えるキノコは倒木など私たちの生活に危険をもたらすことにも繋がります。これを回避する意味でも、日ごろから街の中の樹木に対して多くの人に興味を持ってもらい、これをいたわる気持ちが重要ではないかと考えます。
行政的に言えば街路樹は照明灯や縁石と同じ道路構造物でしかないのでしょうが…。
多くの人に街路樹が好きになってもらいたいと思います。
皆さんが目にする、いわゆるキノコは木材腐朽菌全体でいえば胞子を飛ばす為の生殖器官に過ぎません。例えが少し変ですが、バラの花に当たる部分です。根っ子や葉っぱといった養分を吸収する器官は菌糸と言って樹木の内部に大きく広がっているのです。だから、いくらキノコだけを切除して、その個所に殺菌剤を塗布しても単に花を摘んでいるにすぎず、木材腐朽菌の生育には殆ど何の問題も無いのです。言い換えれば、キノコを幾ら取ってあげても樹木の内部で進んでいる腐朽は止まらないし、残念ながら、この腐朽を停めるような方法も現在の所見つかっていないのが現状です。
前段でも言った通り、樹木や植物の死体を分解して土にかえすという働きは、自然界では大変重要な働きであり、キノコは自然界に無くてはならない存在なのです。もし、キノコが無かったら森は枯れた樹木で覆われてしまい、新しい生命が育ってゆく場所ではなくなってしまいます。
しかし、街路樹に生えるキノコは倒木など私たちの生活に危険をもたらすことにも繋がります。これを回避する意味でも、日ごろから街の中の樹木に対して多くの人に興味を持ってもらい、これをいたわる気持ちが重要ではないかと考えます。
行政的に言えば街路樹は照明灯や縁石と同じ道路構造物でしかないのでしょうが…。
多くの人に街路樹が好きになってもらいたいと思います。
コメント
_ 岩山 大吉 ― 2010/08/02 12:10
_ ブルース松本 ― 2010/08/03 11:30
目通り3mのケヤキはずいぶん立派なものですね!少しでも長生きしてもらいたいものです。
さて、ベッコウタケですが、このブログでも紹介しました通り、見えているキノコの部分は幾ら切除しても樹木を腐らせる力にはあまり影響を与えません!
問題はケヤキの根株内部に広がっているであろう菌糸(栄養を吸収している器官)の活動をいかに抑えるかなのですが、現在の所、樹木を生かしたまま菌糸のみを衰弱させる方法がないのが現状です。よって、街路樹等、車や人の往来の激しい個所に植えられた樹木にベッコウタケが確認された場合には伐採の処置がとられるのが一般的な対処法となっています。
しかし、お寺や御宮に植えられて御神木となっている樹木の場合あっさりと切るという事もできません。そこで、あくまでも対処療法的な考えですが、周辺の土壌改良作業を行い、まだ健全な根を成長させて樹木の延命を図るとういう方法が考えられます。
ベッコウタケは子実体(キノコ)から胞子を飛ばして他の樹木に伝染するという方法だけではなく、土壌中に菌糸を伸ばし、他の樹木の衰弱した根系に伝染するという力が非常に強いです。言い換えれば土壌の硬度が硬く踏み固められていたり、透水性が悪かったりすれば根が衰弱する可能性が高く、ベッコウタケにとって絶好の繁殖状況が出来上がるわけです。
そこで、ケヤキの周辺の土壌を柔らかくして通気性、透水性に優れるものに改良を施せば、ベッコウタケの増殖を少しでも遅くできるのではないかと考えます。
土壌改良の方法については色々ありますが、要は1回で周辺土壌の改良をやるのではなく、数年(3~4年)かけて徐々に改良を進めていかれる事をお勧めします。ケヤキの根の場合深さ60㎝~1mの比較的浅い所に吸収根と呼ばれる、水分やミネラルを吸収し成長を促す大切な根がありますので、その部分の改良で良いと考えます。直径10~20㎝深さ60㎝程の孔を根の周囲にスポット的に空けて、掘り上げた土に土壌改良剤を混入して埋め戻すだけでもある程度の効果が期待できるのでないでしょうか?
最後に、液状のものは菌糸ではないように思います。菌糸は糸状の形状で樹体の中に広がっており、それのみが外へ露出する事はないと思います。
もしかしたら、ベッコウタケにより腐朽した個所に他のキノコが生えたものではないでしょうか?
自分なりに判る範囲でお答えをさせていただきましたが、今後、何か判ればまたコメントさせていただきます。
さて、ベッコウタケですが、このブログでも紹介しました通り、見えているキノコの部分は幾ら切除しても樹木を腐らせる力にはあまり影響を与えません!
問題はケヤキの根株内部に広がっているであろう菌糸(栄養を吸収している器官)の活動をいかに抑えるかなのですが、現在の所、樹木を生かしたまま菌糸のみを衰弱させる方法がないのが現状です。よって、街路樹等、車や人の往来の激しい個所に植えられた樹木にベッコウタケが確認された場合には伐採の処置がとられるのが一般的な対処法となっています。
しかし、お寺や御宮に植えられて御神木となっている樹木の場合あっさりと切るという事もできません。そこで、あくまでも対処療法的な考えですが、周辺の土壌改良作業を行い、まだ健全な根を成長させて樹木の延命を図るとういう方法が考えられます。
ベッコウタケは子実体(キノコ)から胞子を飛ばして他の樹木に伝染するという方法だけではなく、土壌中に菌糸を伸ばし、他の樹木の衰弱した根系に伝染するという力が非常に強いです。言い換えれば土壌の硬度が硬く踏み固められていたり、透水性が悪かったりすれば根が衰弱する可能性が高く、ベッコウタケにとって絶好の繁殖状況が出来上がるわけです。
そこで、ケヤキの周辺の土壌を柔らかくして通気性、透水性に優れるものに改良を施せば、ベッコウタケの増殖を少しでも遅くできるのではないかと考えます。
土壌改良の方法については色々ありますが、要は1回で周辺土壌の改良をやるのではなく、数年(3~4年)かけて徐々に改良を進めていかれる事をお勧めします。ケヤキの根の場合深さ60㎝~1mの比較的浅い所に吸収根と呼ばれる、水分やミネラルを吸収し成長を促す大切な根がありますので、その部分の改良で良いと考えます。直径10~20㎝深さ60㎝程の孔を根の周囲にスポット的に空けて、掘り上げた土に土壌改良剤を混入して埋め戻すだけでもある程度の効果が期待できるのでないでしょうか?
最後に、液状のものは菌糸ではないように思います。菌糸は糸状の形状で樹体の中に広がっており、それのみが外へ露出する事はないと思います。
もしかしたら、ベッコウタケにより腐朽した個所に他のキノコが生えたものではないでしょうか?
自分なりに判る範囲でお答えをさせていただきましたが、今後、何か判ればまたコメントさせていただきます。
_ 岩山 大吉 ― 2010/08/03 22:45
詳しいアドバイス有り難うございました。
幸いにケヤキは、現在元気よく育っていますので、どれだけでも永く成長が続けられるよう頑張ってみます。
幸いにケヤキは、現在元気よく育っていますので、どれだけでも永く成長が続けられるよう頑張ってみます。
_ ブルース松本 ― 2010/08/04 13:23
傷ついた樹木を治療するには腐朽部の切除やウレタンの充てんなどの方法がとられる場合がありますが、これらの方法はかえって樹木にダメージを与え、より一層の衰弱を招きかねません。
土壌改良処置等は効果が表れるまでにかなり時間はかかります。しかし、樹木の生育環境を改善する処置なので樹木に対する負担はかかりません。気長に続けてみてください。
飛騨高山も暑い毎日が続いているとは思いますが、あまり無理なさらぬよう、くれぐれもお体にはご自愛くださいませ。
土壌改良処置等は効果が表れるまでにかなり時間はかかります。しかし、樹木の生育環境を改善する処置なので樹木に対する負担はかかりません。気長に続けてみてください。
飛騨高山も暑い毎日が続いているとは思いますが、あまり無理なさらぬよう、くれぐれもお体にはご自愛くださいませ。
_ 岩山大吉 ― 2010/08/05 21:50
重ね重ねのアドバイス有り難うございます。
腐朽部の切除は考えていたところですが、一応中止してみます。
後は素人には荷が重すぎるので、お寺の方から、こちらの樹木医さにバトンタッチして頂くことになりました。
いろいろ貴重なアドバイス有り難うございました。
腐朽部の切除は考えていたところですが、一応中止してみます。
後は素人には荷が重すぎるので、お寺の方から、こちらの樹木医さにバトンタッチして頂くことになりました。
いろいろ貴重なアドバイス有り難うございました。
_ 柊再生 ― 2015/09/28 01:24
こんにちは。色々調べていて此方にたどり着きました。もしよろしければご回答ください。
樹齢20-30年ほどの柊(ふ入り)なのですが、枝の先から枯れてしまいました。
発覚時には、クマバチに枯れ木認定されたのか、かなり寄生されていました。
追い出した後、枝を折ってみると白いものや変な模様があり、調べました。現在は腐朽部分の切除、周辺に油かす、栄養剤メネデールを幹へ注入して葉が少し戻りました。
辛うじて小康状態だと思いますが、切除部分などに殺菌剤の塗布を予定しております。
だいぶ朽ちており、これ以上切れないほど幹がなくなってしまいました。年輪黒く変色した幹は全て取りきれていません。まだやれることはあるのでしょうか?(薬など)
もしダメなようなら、まだ大丈夫な枝の挿し木利用も考えます。
宜しくお願いいたします。
樹齢20-30年ほどの柊(ふ入り)なのですが、枝の先から枯れてしまいました。
発覚時には、クマバチに枯れ木認定されたのか、かなり寄生されていました。
追い出した後、枝を折ってみると白いものや変な模様があり、調べました。現在は腐朽部分の切除、周辺に油かす、栄養剤メネデールを幹へ注入して葉が少し戻りました。
辛うじて小康状態だと思いますが、切除部分などに殺菌剤の塗布を予定しております。
だいぶ朽ちており、これ以上切れないほど幹がなくなってしまいました。年輪黒く変色した幹は全て取りきれていません。まだやれることはあるのでしょうか?(薬など)
もしダメなようなら、まだ大丈夫な枝の挿し木利用も考えます。
宜しくお願いいたします。
_ ブルース松本 ― 2015/09/28 13:38
柊再生様
柊の衰弱という事で心配ですね!幹の大部分を失っているという事でかなり腐朽が進行した状態であると思われます。
基本的に腐朽部を切除して殺菌処理をしても腐朽菌を死滅させることにはつながらず、かえってその進行を速める結果となります。樹木を朽ちさせている腐朽菌の菌糸は、一見健全に見える材や根系の奥深くまで侵入しており、活動しているからです。
そこで、考えられる唯一の方法としては、まだ健全な状態で残っているであろう根系の一部を少しでも長く育てることです。
方法としては周辺部の土壌改良があります。周辺の水はけがよければバーク堆肥等の有機質と真珠岩系パーライトの改良剤を周辺の土壌に混合して土壌環境を整えます。水はけが悪ければ黒曜石系パーライトを混合する等して透水性を確保します。水はけが不良の土壌に有機質を投入すると根腐れの危険を増すことになりますのでご注意ください。改良の時期としては11月から12月初旬までが良いと思われます。
私に思いつく方法は以上のようなことです。
柊の衰弱という事で心配ですね!幹の大部分を失っているという事でかなり腐朽が進行した状態であると思われます。
基本的に腐朽部を切除して殺菌処理をしても腐朽菌を死滅させることにはつながらず、かえってその進行を速める結果となります。樹木を朽ちさせている腐朽菌の菌糸は、一見健全に見える材や根系の奥深くまで侵入しており、活動しているからです。
そこで、考えられる唯一の方法としては、まだ健全な状態で残っているであろう根系の一部を少しでも長く育てることです。
方法としては周辺部の土壌改良があります。周辺の水はけがよければバーク堆肥等の有機質と真珠岩系パーライトの改良剤を周辺の土壌に混合して土壌環境を整えます。水はけが悪ければ黒曜石系パーライトを混合する等して透水性を確保します。水はけが不良の土壌に有機質を投入すると根腐れの危険を増すことになりますのでご注意ください。改良の時期としては11月から12月初旬までが良いと思われます。
私に思いつく方法は以上のようなことです。
_ 柊再生中 ― 2015/09/28 18:30
迅速かつ貴重なお答えありがとうございます。
早速試してみます。長い目で延命出来ればと。
まだ切り口の蓋をしていないので、雨が降る前にトップジンMと墨汁、またはヒバ油と樹脂で蓋をしようと思っております(近所になく探している最中です)。
早速試してみます。長い目で延命出来ればと。
まだ切り口の蓋をしていないので、雨が降る前にトップジンMと墨汁、またはヒバ油と樹脂で蓋をしようと思っております(近所になく探している最中です)。
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私はひだ高山に住んでおります年老いた男性ですが10年以上前に手次の寺の境内に有る目通し3.1メートルのケヤキの根元にべっこう茸らしきもの(上の写真の様に根元は赤くなく白いですが)生えているの取り去りました。
くぼみに生えていたため、とりにくくてバールでコジ上げる様にして掘り起こしましたが、500グラムくらいの大きなものでした。
以後毎年梅雨時になると顔を出すので取り続けていますが、絶えることはありません。
今年は出てくるきのこが黄色でなく白くなってきたので、調べてみたところ、最初取り去ったところが空洞になり、そこに透明の粘液が溜まっていて、それが外へ出てくるようですが、この液状のものは菌糸の状態変化したものでしょうか?空洞は外部と隔離した状態になっています。
長い書き込みになりましたが、宜しくお願いいたします。