危険な樹木2013/07/11 13:36

 梅雨の晴れ間かと思っていたら、例年より10日以上早い梅雨明けだとか、この暑さが続けば今年の夏は一体どうなってしまうのかと本当に心配になります。特に植物を扱う仕事をしているものとしては冬に植栽した樹木や、春に植え付けた花壇の草花の水やりに追われる毎日が続きそうです。

 下の写真は先週はじめ、まだ熊本が梅雨だった頃に写した写真です。当社が花壇の管理を行っている市内中心部のとある公園のケヤキです。
 一見何の変哲もない公園のケヤキの木にしか見えないのですが、根元付近をよく見るとオレンジ色の変なものがくっ付いています。写真にも書いていますが、これはベッコウタケというキノコの一種です。


公園のケヤキ

 上の写真を拡大したものが下です。オレンジ色〜クリーム色のマシュマロみたいなキノコがしっかりと着生しているのが分かると思います。

ベッコウタケ拡大
 
 ご存知のように、キノコは森の中で枯れた樹木や生きた樹木の死んだ組織に取り付いて、それらを分解して土に帰すという、自然界にとっては大変重要な働きをしています。ただ、このベッコウタケというキノコは死んだ組織のみではなく、生きた樹木の根っこを枯らすという、とても厄介な性質を持っています。
 生きたままで根っこがキノコ(菌)に侵され、分解されていけば、樹木は極めて不安定な状態となります。強風や強い雨によって、生きた樹木が突然に倒れてしまう可能性があるのです。現に昨年は青山通りで 同じケヤキの木がベッコウタケに侵されて倒れ、下に止まっていたタクシーを直撃するという事故が起きましたし、熊本でも大津町の国道で通行中の車両を直撃という事故も起きています。

 このケヤキは幹周2m近くもあろうかと思える程の立派な樹ですが、倒木の可能性やベッコウタケの影響によると思われる枝枯れも見受けられるので、至急の処置が必要と考え、管理者のほうに状況報告をしておきました。
 私の考えとしては、伐採して新しい樹木への植え替えが適当だと考えます。

 近年、熊本市内の街路樹や公園樹でベッコウタケを頻繁に見かけるようになりました。これらの樹木は植栽後、20〜30年程経過しており、その間、根っこの周辺に地下埋設ケーブルが敷設されたり、舗装の打替えの為に掘られたりしており、少なからず根が切断された形跡があります。こうして根に出来た傷はベッコウタケ等菌類の絶好の侵入経路となる訳です。私たちは樹木の地上部しか見えていませんが、その生育に一番大きな影響力を持っているのは根っこの部分なのです。工事の際等に、樹木の根を切断すると将来的にはどのような危険が及んでくるのか、もう少し理解をしていただく必要がありそうです。



藤崎台のクスノキ群2013/07/17 15:09

 先週末、連休初日の土曜日、国の天然記念物に指定されている藤崎台のクスノキ群の調査に樹木医仲間十数名で行ってきました。 熊本の方はご存知ですが、県営藤崎台や球場の外野スタンド外側に7本のクスノキの巨木群があります。その枝の一部が球場内の外野スタンドに大きく張り出しているので、夏場の野球観戦には絶好の緑陰を提供してくれ、外野で野球を観戦する人たちに とっては正しくベストポジションとなっています。

 この、立派なクスノキ群ですが、数年前から樹勢の衰えが顕著になり、樹木医の仲間が調査をしたり、樹勢回復のための処置を行ってきました。その甲斐あってか、処置を行った樹木は少しずつ元気を取り戻しつつあるのですが、他のクスノキの様子が思わしくありません。そこで、今回、管理を行っている熊本県の了解を得て樹木医の有志でボランティアによる外観上の調査を行いました。
 
 下の写真は衰弱が最も顕著なスコアボード横のクスノキです。力感溢れる堂々とした幹と枝ですが、葉の量が極端に少なく空が透けて見えています。

5号木全景

 まず最初に樹木の周辺の調査から。樹皮の様子や幹に着生している植物を調べて樹勢の衰え具合を調べています。

5号木調査状況

 せっかくなので、幹周についても再度計測を行いました。出来るだけ正確に測定を行うために、幹の周辺の地盤が一番高いところから1.3m上の部分の円周を計測します。下の写真を見ると幹周というよりも、根の周囲を測っているようにも思えるのですが、全国的に統一されている考え方に基づくとこのようになります。日本一の巨木といわれている鹿児島県姶良町の蒲生の大楠には及ばないものの、最大のものでは19m程の値が得られました。

1号木計測

 幹の枝分かれした箇所には大きな裂け目があったので、脚立を使って内部を見る事にしました。

5号木の空洞調査

 すると、内部は下の写真のように地面まで貫くきな空洞となっており、一部は焼けこげた痕がはっきりと残っていました。また、地面にはコンクリートの塊が落ちています。昔、空洞を塞ぐ目的でコンクリート で固めたりしたものが落下したのでしょうか?今後、詳しい調査が必要かもしれません。

5号木内部の空洞

 今回の調査で遠くからでは分かりづらかった衰弱の様子が、近づいて見てみるとかなりはっきりと分かってきました。葉の量が極端に少なかったり、幹や枝の空洞化が進行していたり、幹の代謝の衰えから各種のツタなどの着生植物が見られたり等々。

 このまま放置していれば、せっかくの熊本の財産が取り返しがつかなくなる可能性もあります。そのためにも、樹木の高い位置まで見れるような精密な調査が必要です。今回の簡易的な結果をまとめて県に報告をし、今後さらに調査を進めていけるように働きかけをしたいと皆さんの意見も一致しました。

花と緑の講習会2013/07/23 15:10

もうすでに1か月ほど前になりますが、今年も熊本市立動植物園にて『花と緑の講習会』を担当させていただきました。

 熊本市内にお住まいの方は毎月配布される『市政だより』でご存知かと思いますが、毎月こちらの『緑の相談所』にて盆栽の管理方法や寄せ植えづくりなど、各種の講習が開かれています。

 今回私は樹木医という立場から『樹の見方、育て方』というタイトルでお話をさせていただきました。

 当日は梅雨の晴れ間という言葉がぴったりの晴天で、室内での座学に加えて植物園内の見本園をみなさんと一緒に歩き、実際の樹の姿を見ながらそれぞれの特徴などを観察しました。

 動画はそのダイジェストと言いましょうか、こんな感じで講習会が行われているんだな、と思っていただければ幸いです。 

 

ちょっとお知らせ2013/07/24 15:19

実は本日ようやく松亀園のfacebookページを立ち上げました。
 昨年あたりからやらねばと思いながら、ついつい先延ばしにして今日にまで来てしまい、少々焦っております・・・
 もちろんこのブログは今後も続けますし、日々の業務とかちょっとしたことをfacebookでご紹介し、自分の樹木に対する考えや詳しい仕事の内容などは引き続きこのブログにつづっていこうと思っております。
 まずはfacebookを理解しないといけないのでそれが大変ですが(汗)。
 とりあえず一度覗いてみていただければ幸いです。そのうちたくさんの方に「いいね!」ボタンを押していただけるようがんばります!

松亀園facebookページはこちら→樹木医のいる造園屋・株式会社 松亀園


夏の甲子園熊本大会決戦の舞台2013/07/29 11:54

 下の写真は前々回、このブログで紹介した藤崎台のクスノキ群のうちの1本です。
枝が自分の重さで、下のほうへ枝垂れるように伸びており、なかなかの風格を感じさせます。通常、枝の下への立ち入りは樹木保護の観点から立ち入り禁止となっています。この日は調査目的という事で特別に入らせてもらったのですが、夏の日差しを遮ってくれて気持ちのいい緑陰を提供してくれます。

藤崎台クスノキⅠ
 
 このクスノキ群は球場バックスクリーンを取り囲むように立っており、そのうち2本ほどが球場外やスタンドに枝をのばして、夏場、高校野球を観戦している人達にも同じような木陰を提供してくれています。バックスクリーン脇の木陰に観戦する人たちが集まる姿は、中継のテレビでもよく映し出されます。

 そんな中で開催される、夏の甲子園の熊本大会も先週代表校が決まりました。決勝戦では熊本工業高校が見事、甲子園への切符をつかみました。私も試合の様子を事務所のテレビで観ていたのですが、行き詰まる熱戦で、延長の末の勝利でした!
  試合も良かったのですが、試合後、熱戦を繰り広げた両チームが、本当に爽やかな表情でお互いの健闘を称え合う姿に感動しました。

熊工優勝号外

 球場がこの地に出来て50年以上、クスノキの巨木の元で毎年繰り広げられる熱戦は熊本の夏の風物詩と言ってもよい風景です。

 これからも高校球児達の戦いを、クスの巨木が見守っていられるように、私たちも
樹木医として樹勢回復のために知恵をしぼっていきたいと考えています。