キノコの季節 ― 2013/09/03 09:08
8月は40度を超える場所があったかと思うと、ある場所では集中豪雨、全国的に異常気象だったとか。そんな8月も何とか乗り切って、いよいよ9月に入りました。天気も少しは秋らしく安定するのかと思いきや、連日の雨続きで、この1週間以上お日様にお目にかかっていないような気がします。
そんな中、熊本市北区のとある小学校の要請で校庭のエノキを見に行くことになりまた。対応してくださったのは教頭先生で、「1年ほど前から幹の上のほうにキノコが目立ち始め、この夏ごろからかなりひどい状況になったので、心配になり連絡をしました。」とのことでした。
問題のエノキが下の写真です。

遠くからではキノコの様子は分かりにくいですが、二股になった右の幹の上のほうが白くなっているように見えます。下の赤いバリケードは枝が落ちる危険もあるのではと先生が考えられて、児童の立ち入り禁止をするために設置されたそうです。賢明な措置だと思います。

近くまで寄ってみると、幹一面にクリーム色のキノコが着生している様子が分かります。現在はコウヤクを張り付けたような状態ですが、今後は小さなサルノコシカケ状のキノコ(子実体)が密生したような状態へと変化してくるものと思われます。
このブログでも、何度も書いていますが、樹木に着生したキノコ樹木の材部や周辺部を腐らせているのです。おそらく、このエノキも内部はかなり腐朽が進行した状態で、先生が憂慮されていた通り、幹折れの危険性もあると考えられます。

さらに、このエノキの隣にある同じような大きさのエノキは、幹の二股部分が空洞になっており、内部にはご覧のようにシメジにも似たキノコが着生していました。キノコの右側に見える黄色いものは発泡ウレタンの残骸です。
おそらく、空洞をふさいで雨風から樹木を守る意味でウレタンを充填されたのでしょうが、そのことが空洞内部の湿潤化を助長して、このようなキノコの発生に拍車を掛けたのだと推測できます。
昔は空洞を塞ぐという考え方もあったのですが、現在では樹木の空洞はそのまま放置するという考えが基本になっているのです。
このエノキは、樹木医で調査することになりました。ここまで腐朽が広がっていれば、根本的に樹勢を回復させる手立ては無いに等しく、当面の対策としては、幹折れの危険を回避するためにキノコの着生した部分の幹を切断することとなるでしょう。
このような事態に至った原因としては、大枝が風の影響で折れた、あるいは大がかりな剪定を行った、その切断面から腐朽菌が侵入しキノコが発生したのだと考えられます。
今後もこのような事例は後を絶たないのではと思われます。都市化の中で人間と樹木とのかかわりあいも複雑になっており、樹木の扱い方を誤れば、のちに危険を伴う結果ともなりかねません。事前に、私たちが適切なアドバイスができるよう、その環境を作ることが大切なのでしょう。
ナンキンハゼ ― 2013/09/07 13:41
前々回、このブログで紹介した江津湖公園に現在施工中の、草刈り作業の進捗状況を確認する目的で行ってきました。予期せぬ大雨ので冠水してしまった芝地は、すっかりと水も引きいつもの公園の姿を取り戻していましたが、作業の方は芝地に打ち上げられた水草や、刈り取ったまま濡れてしまった草の処理に苦労をしている様子でした。
公園の樹木に関しては、あれだけ水に浸かっていたにも関わらず、何事もなかったかのように元気な姿を見せています。樹木の生命力のたくましさと言うか、環境適応能力の強さに感心されられるばかりです。
下の写真は公園内のナンキンハゼです。名前の通り中国原産で、ハゼと同じようにその種子からロウを採っていたことからこの名前が付きました。ただ、ハゼの木はウルシ科の樹木ですが、このナンキンハゼはトウダイグサ科の樹木で同じ仲間の樹木という事でも無いようです。
この樹木の実は下の写真のように直径2㎝程の卵のような
形をしており、秋も深まる頃に褐色に熟して開き、中に入っている3個の白い種子が姿を見せます。昔はその種子からロウや油を採っていたそうです。
今ではロウを採る目的では殆ど栽培がなされてませんが、ハゼノキ同様に紅葉が美しいことから公園樹や街路樹として植えられています。
みなさん、この公園に来られることがありましたら、園内でナンキンハゼの木を探してみてください!葉っぱも菱型に近い形をしているので、見つけやすいと思いますよ。
水辺に目を移すと、先日の豪雨で冠水した辺りの水際に生えていたヨシは、ご覧のように倒れた状態になっています。そこに1羽のアオサギが獲物を狙っているのでしょうか、長い首の先についた頭を盛んに動かしながら辺りの様子を伺っていました。
倒れたヨシの上にはこの他にも、別な種類の野鳥が羽を休めている姿が伺えました。
公園の草地は、数日間も水に浸かっていたとは思えないような自然の逞しさで溢れています
。
水辺の植物 ― 2013/09/10 16:48
今回もまた前回の続きというか、同じ公園内の話題です。
熊本市内に住んでらっしゃる方はよくご存知かと思いますが、江津湖公園は名前が示す通り周囲6km程のひょうたん型をした湖に面した公園です。なので、多くの水生植物や野鳥の宝庫といってもいいほど、数多くの種が生息しています。
夏の初めは園路脇に鮮やかな黄色〜山吹色のヘメロカリスが咲いていたのですが、あっという間にこの花の季節も終わってしまいました。そのせいか公園の風景も、色彩が緑一色になったような気がします。そんなことを思いながら、水路脇のデッキを歩いていると薄紫の鮮やかな花を見つけました。
ポンテデリアという変わった名前の植物です。江津湖でもよく見かけるホテイアオイの
仲間で、ミズアオイ科の植物です。花の盛りはとうに過ぎたみたいで、散った後の茶色い穂だけが目立つ状態でしたが、園路に沿って1つだけ満開になった花穂を見つけました。健気に咲いています。
そういえば花色の微妙な色合いがホテイアオイそっくりで、親戚というのもうなずけます。
さらに周囲を眺めていると、流れの中にひっそりと咲いている真っ青の鮮やかな花が目に入ってきました。
こちらが本家本元
というか、科の総称にも使われているミズアオイの花です。昔はこの公園でも至る所に見られたという話ですが、今では限られた場所にしか生育していないそうです。背の高いヨシや外来種のウオータレタスに生息地を奪われているということなのでしょうか、それにしても青がホントに綺麗です。
あの万葉集の中にも水葱「ナギ」(ミズアオイの別名)として求愛の歌に詠われて、人々に親しまれているとのことです。
そういえば、公園内にも夏目漱石や中村汀女など文学者の句碑や歌碑が残されていますが、その中にこのミズアオイ「水葱」が読まれた句碑があります。
“流れゆく 水葱に照り添ひ 江津の月” 作者は熊本県出身の有働木母寺という俳人だそうです。
なんだか、静かで澄み切ったような情景が目に浮かんで来るような情景だと感じました。
多くの文学者が歌や俳句のモチーフを求めたほど、昔から江津湖周辺の自然は素晴らしかったのでしょう。
秋の気配 ― 2013/09/24 14:02
もうすぐ10月というこの時期になっても、大変な暑さが続いております。ここ熊本では最高気温が34℃を超える日々が続いており、夏の疲れがなかなか抜けない方も多いのではないのでしょうか。
そんな中、連休の最終日に、お隣の福岡県東峰村まで出かけてきました。主な目的は、この村
にある小石原焼きの窯元から案内のお葉書をいただいてたので、そこを
訪ねることでした。
熊本から高速道路を利用して2時間半あまりのドライブで福岡県東部に位置する山村、東峰村に着きます。元は小石原村と宝珠山村という2つの村があったそうですが、平成の大合併によって東峰村となったそうです。しかし、合併してもなお村のままというのは、いかにこの地がのどかな場所であるかがお分かりいただけると思います。
上の写真は訪ねた窯元から小石原の集落を写したものです。ここは民陶の里と呼ばれ、集落内に50件程の窯元が軒を連ねます。写真に写っている道も
石畳となっており、途中に藁葺き屋根の窯元や登り窯なども見られます。何だか、ここだけは時間がゆっくり進んでいるような、そんな安らぎを覚える風景です。
標高が500m程あるということで、風もひんやり秋の気配がします。ススキも花穂を伸ばし始めており、これから11月にかけてきっと一番良い季節を迎えるのでしょう。
窯元ではこの地に伝統的に伝わる飛びカンナの技法を用いた大皿と、別の皿を2枚購入しました。
独特の存在感があり、秋の食材を盛るのには良さそうです。
お目当ての品を手に入れたら、次は棚田で有名な宝珠山村に向かいました。たわわに稲の実る棚田に彼岸花が咲いている。そのような典型的な風景を思い描いていたのですが、残念ながら彼岸花は見頃を過ぎ、稲刈りはほとんど終わっていました。その代わりというのもなんですが、この地を走るJR九州の日田彦山線、筑前岩屋駅の線路脇のキバナコスモスを撮ってみました。町中でも普通に見られる何の変哲もない草花ですが、田舎の駅舎裏に咲いていると、とても美しく感じます。
また、この駅には水を汲みにくる人の姿が絶えません。近くにある釈迦岳トンネルの建設の際に、
清水が湧き出して以来地元の人々に利用されたり、遠くから水を汲みにくる人も増えたそうです。
東峰村で秋を満喫したあと、帰り
に道の駅に立ち寄ってもう少しお土産を買い足すことにしました。
山を下りて車で30分程行くと朝倉市に出ます。ここは柿や梨などの果物が有名です。ただ、この日は連休最終日ということもあってか、駐車場に入りきれない程、人が集まってきておりとても買い物をする気分にもなれない程でした。
丁度、道の駅前の田んぼを利用して植えられたひまわりが見頃を迎えたので、見物して帰ることにしました。
山の方では確実に秋の気配を感じれたのですが、平地では季節の進み具合がややゆっくりなようです。
それでも、時折、
田んぼを渡る風が八月の残暑の頃とは違っているような気がしました。