白い花 ― 2015/06/04 17:39
今月の14日(日曜日)に熊本市動植物園で開催される、緑の講座の下準備に園内を訪ねた時に撮った写真です。花径10センチ程の白い花をうつむきかげんに咲かせています。花芯の紫と純白の花びらがとても印象的です。ご存知の方もおられると思いますが、オオヤマレンゲの花です。
オオヤマレンゲという名前は、奈良県南部の大峰山に自生しており、ハスの花(蓮華)に似た花をつける事に由来しているそうです。九州でも標高1000m程の高い山に自生し、阿蘇でも見られるそうです。梅雨入りしたてのうっとうしい季節に、何とも心を和ませてくれるような透明感のある花です。
ちなみに、モクレンの仲間の落葉中高木で樹高が3m〜5mになるそうです。高山の樹木という事ですが、熊本市動植物園では毎年奇麗な花を楽しめるそうです。
もうひとつ、準備を終えて帰る時に気になった花がありました。どこからともなく漂ってくる濃厚な花の香り、そうですクチナシの花です。こちらも白い清楚な花を膝丈程度の高さでうつむくように咲かせています。皆さんにはおなじみですよね!庭の片隅や、公園なんかの少し影になるような場所に植えられているのをよく見かけます。この花の香り、私は香水のような匂いがしてとても好きなのですが、皆さんは如何でしょうか?
この2つの花はとても奇麗なのですが、あいにく花持ちがあまりよくありません。せいぜい3日程で茶色く萎んでしまいます。アジサイの花は別として、気温の上昇とともに、これから盛りを迎える花は命が短いという傾向にあるようです…。
ジャカランダの花 ― 2015/06/08 08:51
最近、花の話題が多いのですが、今回も花の話題です。ただ、今回ご紹介する花は日本原産の樹木でありませんが、日本の暖かなごく限られた場所で植えられています。ジャカランダという名前をお聞きになった方はいらっしゃるでしょうか?いかにも熱帯という雰囲気の名前の通り、南米ブラジル原産のノウゼンカズラ科の落葉樹です。
今、お隣長崎県の島原半島にある小浜温泉でジャカランダ祭りが開催されているという事で、早速、フェリーに乗って行ってきました。
熊本港から高速フェリーで30分、波静かな有明海を一またぎして長崎県の島原港に到着です。下船後、早速、目的地の小浜温泉に向かいます。途中、雲仙の山々を越え、観光地として有名な雲仙温泉街から立ち上るイオウのにおいに心引かれつつも、坂道を一気に下って小浜温泉に到着しました。熊本市内から2時間少々で着いてしまいました。
橘湾に面した温泉街の国道沿いに街路樹としてジャカランダが植えてあります。青紫の独特の花色が印象的で、いかにも南国ムード漂うという感じです。ただ、花を咲かせている木は全体の2〜3割程度で、その花も5部咲きといったところでしょうか?花を眺めていると、花の写真を撮りにこられたのでしょう、一眼レフカメラを持った人に「今年は開花が遅れているみたいだけど、この先に沢山花を付けている場所があるよ。」と教えていただいた所まで歩いてみました。
確かに、温泉街の前よりも上の写真の場所の方が花付きが良いのですが、それでも、まだこれからという感じで、つぼみがついているのと、そうでないのがはっきりしている様子です。帰ってからネットで調べてみたのですが、ここもジャカランダの植栽値として有名な宮崎県日南市でも、今年の花付きは今ひとつという事が書いてありました。南米生まれでラテンの血が入っているから花付きも気まぐれということなのでしょうか…?
花は桐の花に似ているような気がしますが、とにかく鮮やかな青紫色で一目を引きつける花です。ブドウの房のようでもあります。葉っぱは、熱帯・亜熱帯地方にあるヘゴやシダの葉っぱそっくりでエキゾチックな雰囲気を漂わせています。
ジャカランダが植えられている街路は海沿いの道で、とても気持ちのいい場所です。今度、機会があればこの木下をジョギングなんかして、後は、小浜温泉にゆっくり浸かって汗を流し、おいしい海の幸に舌鼓をうつ、なんて事が出来ればと思う次第であります。
帰り道は同じコースを通って、島原の道の駅「みずなし本陣」に立ち寄りました。ここは、かつて雲仙普賢岳の大火砕流後の土石流被害で、多くの家屋が埋没した地点でもあります。今も、1階の屋根付近まで土砂に埋もれた家屋が保存展示されており、土石流の凄まじさを実感できます。上の写真は駐車場から写した平成新山です。普賢岳付近に出来た溶岩ドームが成長して出来た新しい山で、日本で一番新しい山だそうです。
島原半島は雲仙火山の影響で至る所から温泉が湧き出し、雲仙温泉や小浜温泉など古くから温泉街として栄えいます。また、その地熱の影響で、本来日本では生育が難しいとされる熱帯性のジャカランダなども立派に育っています。今、各地で火山活動が活発化し、周辺住民の方も不安に思われている事でしょう。この雲仙の山も、今後もずっと穏やかであり続けてもらいたいものです。
樹木にキノコ! ― 2015/06/29 13:16
とにかく雨続きの今年の梅雨にあって、昨日今日は貴重な梅雨の晴れ間となっています。九州南部では6月の降水量が平年の2倍以上にもなっているとか?人にとっては鬱陶しい日々ですが、このような湿度の高い状態を好む生き物もいます。
そんな生き物の中のひとつがキノコなのです。元々、キノコは材質腐朽菌といって枯れた樹木を分解して速やかに土壌に返す重要な働きをしています。しかし、キノコの中には生きた樹木の根っこに寄生して樹木を枯らしてしまったり、倒木などを引き起こす毒性の強いものもいます。
その、代表的なものが下の写真に見られる。ベッコウタケと呼ばれるキノコです。
上の写真は我が家の近所にある児童公園のキンモクセイです。遠くから見る分には「少し葉っぱの量が少ないかな?」と感じる程度でさほど気に留めるような事も無いのですが、近づいて根の当たりを見てみるとご覧の通りです。
根元周辺に黄色がかったクリーム色のキノコがびっしりと張り付いています。キノコといってもシメジやシイタケの様に柄があって傘が開いているというものではありません。最初はコブ状の塊が現れ、成長するに従ってサルノコシカケの様な形へと変化していきます。11月頃になると、焦げ茶色に変色して活動は一旦収束しますが、次の年の6月頃から活発に活動を開始します。名前の由来はベッコウ色をしているからでしょうか?
繰り返しになりますが、このキノコの特徴としては樹木の根を腐朽させるということです。ですので、毎年夏場に多く報告される樹木の倒木による事故の主な原因と考えられ、非常に危険なキノコでもあります。
しかし、残念なことに、樹木を活かしたままキノコ(材質腐朽菌)だけを殺すことは不可能です。キノコとして我々が見ている部分は材質腐朽菌の生殖器官として胞子を飛ばす役割を果たしています。バラの木で例えれば花に当たる部分なのです。養分吸収器官である枝葉や茎、根に当たる部分は菌糸と呼ばれ、樹木の内部に広がり組織を分解しているのです。バラの花を一生懸命に摘み取っても生育自体にはさほど影響がないのと同様に、キノコ自体を取り除いて、そこに殺菌剤を塗ってもあまり意味のないことなのです。
上の写真は2013年の7月に、このブログでも紹介した熊本市内某公園内のケヤキです。管理者には伐採を勧めたのですが、キノコを削って殺菌剤と強化剤の塗布の処置が施されただけでした。その後の様子が気になっていたのですが、先日久しぶりに前を通ってみたら、以前ベッコウタケが生えていた同じ場所に再度発生していました。
近づいてみると10㎝〜5㎝程の大きさのキノコが根元に3箇所ほど見られました。これから、夏場にかけてさらに成長するものと思われます。
補強のためでしょうか、杉丸太で支柱が設置されています。しかし、幹周が3m程度、樹高15m程もある大きな樹木を支えるには如何にも貧弱な気がします。キノコの成長を伺いながら、管理者の方には伐採を含め適切な処置をとるように働きかけたいと思っています。
これから10頃にかけてはベッコウタケが成長する時期になります。上の写真でも分かるように、枝葉はよく伸びて健全そうに見える樹木でも根元にベッコウタケが発生している場合が多くあります。特に公園や街路樹で見られるケースも多いので、特に注意が必要と言えます。もし、見かけたら公園や道路の管理者への報告をお願いいたします。
上の写真は、7年前に菊池郡大津町の国道で起きたケヤキの倒木事故の写真です。この原因も根元に発生したベッコウタケによるものでした。ひとつ間違えれば大事故になりかねなかった事例です。このような倒木事故が起きないように、今後は樹木の点検も重要な業務となっていくと思われます。