受賞報告2010/12/01 13:18

去る11月27日、崇城大学にて「日本造園学会九州支部熊本大会」が開催されました。
大会テーマ「都市の品格と造園まちづくり」ということで、基調講演、大学教授や公園管理、環境に関わる仕事をされている方々によるパネルディスカッション、また一般市民の方向けにミニ門松作りなど丸一日にわたって多彩なプログラムが展開され、県内外より数多くのご参加をいただきました。
その中で、11月17日付のブログでもお知らせしましたとおり、当社代表取締役松本雄介が事例報告を行いました。
発表内容は「熊本駅前クスノキの移植について」。工事の様子をリアルタイムで当ブログでご紹介しましたのでお読みいただいた方もいらっしゃるかもしれません。(今でももちろん読めます!)
A会場にて8名、B会場にて7名の研究・事例発表があったのですが、なんと!
Most Impressive Presentation 「口頭発表賞」をいただきました!!

口頭発表賞いただきました!

この賞は当日発表を聞かれた方の投票によって受賞者が決められるそうで、本人はそんな賞の存在すら知らず、懇談会で旧知の方や初めてお会いする方とくつろいで酒を酌み交わしていたところ(?)「松本さん受賞ですよ!」と言われ、酒の酔いが醒めたとか(笑)。

プレゼン中
↑プレゼン中の様子を参加者の方がメールで送ってくださいました<(_ _)>

今回の学会は参加者も多く、また翌日28日に行われたエクスカーション(藤崎台のクスノキ群や江津湖をめぐりました)も盛況で、自分の受賞も嬉しかったようですが、今学会が成功の裡に無事終了したことが何よりの喜びであったようです。
「これを機にさらに熊本の良さや緑の美しさを内外にアピールしたいきたい!」との思いを新たにしたとのこと。このブログも(更新が不定期で申し訳ないのですが)活動のひとつとしてがんばっていきます!皆様これからもよろしくお願いいたします。

***「自分が受賞したのをブログに自分で書くのはちょっとねえ・・・」と、本人が(年甲斐もなく)恥ずかしがっておりましたので、本日は社員代筆にて失礼いたしました!***

造園学会2日目2010/12/02 10:09

前の記事は自分でアップするのは恥ずかしいと言ったら、会社の人がアップしてくれました。(汗)

学会自体は27日(土曜日)で終了し、みなさん交流会後に熊本市内の街へ出かけて行かれ、当日の話をネタにさぞ美味しいお酒を飲まれたのではないかと思います。しかし、私と女性スタッフの2人は学会参加者と一般市民を対象とした翌日のエクスカーション(小旅行)に備えるために、いそいそと帰路についたのでした…。

そして、翌日の様子が下の写真です。最初の見学地である、熊本市北迫町にある“寂心さんのクスノキ”です。以前もこのブログで紹介しましたが、葉張りが50m以上、樹齢800年を超える熊本市の代表的なクスノキです。この日の参加者の中で特に県外から参加されている方々は造園のプロでもあるのですが、その大きさに感嘆の声をあげていらっやいました。紹介した私も少し調子に乗って、その説明が自慢げになっていたのではと思います。

寂心さんのクスノキ




下の写真は次の見学地の水前寺江津湖公園(広木地区)で公園管理担当者の説明を聞かれているときのものです。この公園内には多くの水生植物と希少動物が生息しており、担当者はおそらく湧水の流れ沿いに生息している植物の説明をしているものと思われます。
生憎この日は風が強く底冷えがするような空模様だったにも関わらず、みなさん熱心に説明を聞いておられました。

広木公園の説明


この日の参加者はスタッフ2名を入れて20名、みなさん和気あいあいと最後まで楽しい時間を過ごされたと確信しています。ただ、バスにある筈のマイクがなく、案内役を務めました私の美声?がだみ声気味だったのが残念といえば残念なところです…。

熊本駅南側2010/12/04 11:46

写真は熊本駅南側の電車通りから駅方面を撮影したものです。写真中央に映っているのは市電の田崎橋駅です。左側の大きな建物は国の合同庁舎、その隣がホテル、さらに正面奥の建設中の建物は商業施設と図書館、高層階はマンションとなる予定の複合ビルです。
今までの熊本駅前のイメージとはずいぶん違って、近代的なエリアと生まれ変わりつつあります。
実は当社でもこの付近の植栽工事を受注しており、歩道や中央分離帯にこれから樹木を植栽する準備にかかっているところです。
電停の屋根の右側にはケヤキの木が植えられています。将来は樹木が作る緑のトンネルの中を市電が走り抜けるようなイメージでこれから植栽が行われます。テレビなどでよく見かける、ヨーロッパの街並みをモデルにしたという事です。



田崎橋駅付近


さらに、路面電車の線路の周囲には芝が張られており、さながらグリーンの絨毯の上を電車が通過するという事でしょうか?軌道の中に芝を植栽すると景観的に向上するだけではなく、夏場の高温を抑制する効果、電車が動くときに出す騒音を軽減する効果などが非常に高いとの実験結果が得られています。
来年3月の九州新幹線全線開通時には樹木の緑も芽生え始め、周辺が森の都熊本のイメージにふさわしい場所になっているかと想像するだけで、その日が待ち遠しいです。

駅前軌道敷緑化


どこの通りでしょう?2010/12/04 16:23

下の写真はいったいどこの通りだと思われますか?
イチョウ並木で有名な通りと言えば大阪御堂筋や横浜の日本大通りなどが思いつきますが、もちろんそのようなメジャーな通りではありません。実は会社から300メートルほどのところにある大通りです。詳しくは国道266号の熊本市内某所となるのでしょうか。

いつもの年だと、台風対策として夏場に枝葉の剪定作業が行われるために、黄葉はしてもご覧のようなボリューム感はなく、街並みの中にポツポツと街路樹があるという印象でしかありませんでした。
しかし、今年の剪定の様子をひそかに観察していたら、交通の邪魔になる下枝のみを切るだけで樹冠(枝葉の部分)を縮めるような剪定は行われなかったのです。その結果、ご覧のような素晴らしい景観を楽しむことが出来ています。

もちろん、落ち葉の量は例年になく大量で、後片付けが大変な面もあるのですが、歩道や車道の一部が黄色い絨毯で敷き詰められている様子もとても綺麗でした。
これからも、あまりむやみに樹冠を切り詰めるような剪定をせずに、出来るだけ枝葉を大きく伸ばすようにしてもらいたいものです。もし、信号や道路標識にかぶさるようであれば、邪魔な枝を切除するのではなく、それらを道路中心方向に伸ばすような方法を考えるべきだと思います。

日本の道路の場合、欧米に比べて幅員(特に歩道)が狭く、その結果として、交通の支障となる街路樹がむやみやたらに切り刻まれるという事が各地で起きています。私も、行政や沿線住民の方の相談を受けたりするケースも多いのですが、お互いの利害が絡んでくると景観の事ばかり言えない場面も多々あります。しかし、美しい並木道というものは、その存在自体がある程度の経済効果をもたらすと思うのですが…。多くの方々の理解を求めるには道のりがまだまだ険しそうです。


会社の近所のイチョウ並木



師走のバラ2010/12/13 08:10

写真は当社で植栽管理を行っています熊本市内の某歯科医院のバラです。今年は夏は猛暑が続きましたが、秋以降順調に気温も低下し、適度な降雨もあったため、いつもの年よりも冬の花付きが良好なようです。
丁度この日も、他の樹木の剪定も兼ねて、早めのバラの冬剪定を行う予定にしていたのですが…。
予想以上にバラの花付きがよく、結局、バラの剪定は年明け1月に延期しました。
植栽した場所も西側が医院の建物の壁で、それ以外は開放的なスペースとなっており、風通しも良く、夕方の西日だけをさえぎる理想的な環境であることも花付きの良さを助けていると思われます。


マチルダ



因みにこのバラの品種はマチルダと言い、四季咲き性の強いフロリバンダです。ややとげが多い品種ですが、微妙にウエーブを描く、うすピンクの花びらが魅力的な庭植えとしておススメのバラです。地植えにすると高さ1.5m横幅1.5m程に成長します。


倒れかけた杉2010/12/14 17:01

写真は熊本市北東部の市道沿いに植栽されていた杉の木を撮影したものです。街路樹として杉を植えるのは少々変わっているとも思われるのですが、実はこの付近から東の阿蘇方面に向かう道は、かつて豊後街道として加藤清正が整備した歴史のある道なのです。特に熊本市から東隣の菊陽町、大津町にかけての約12㎞程の区間は大津街道と呼ばれ、清正が整備したとされる杉並木が続く場所でもあります。日本の道百選にも選ばれている、熊本で一番有名な並木道なのです。しかし、現在では清正の時代に植栽された杉は1本も残っておらず、一番古い杉の木でも明治維新に植えられたといわれています。ただ、その頃、植栽された杉も幹回り2m以上に成長してかなり風格も出ています。きっと、知らない人に加藤清正が植えたといっても、疑う人は少ないかもしれません?
実はこの倒れかけた杉の木も杉並木保存会の方々の手で、昭和62年ごろに並木の後継樹を育てる目的で植栽されたという事です。
それが、なぜこんな姿に…。

大津街道杉並木


原因を解く証拠が下の写真にあります。
根元付近が腐って空洞化しているのが判ります。しかも、空洞がら上方には縦方向の亀裂まで入っています。これは、空洞が根元だけにとどまらず、幹の上部まで広がっていることを示しているのです。この空洞が原因となり、樹木全体の重量を支えることが出来ずに、少しの風で傾いて行ったのだと推測できます。

スギの腐朽箇所


それでは、どうしてこのような空洞が出来てしまったのでしょうか?
理由は上の写真ではわかりませんが、空洞の反対側の幹の地際部に残されていました。横方向に多数の傷が入っていたのです。これは周辺の草を刈る際に草刈り機の刃が、樹木に当たって出来たものでした。草刈りを行うたびに幹の根元部分が傷つけられ、傷ついた部分を補おうとして周辺の樹皮を発達させ、その結果、写真でも判るような根元部分のふくらみが出来上がったと考えられます。
樹木の幹が異常な形で膨らんでいるという事は内部で材の腐朽による空洞が広がっているサインと考えてられます。
せっかく、昔の杉並木の維持のために植栽された杉の木が、少々乱暴な管理の方法で台無しになるのは残念です。この杉の木を調査した時にも保存会の会長さんのお話を聞く機会があったのですが、保存会も実質上自分一人になってしまって、十分な世話が出来ないようなことを言われてました。どうしてもっと丁寧に草刈りを行わないのか?草刈りを行った業者(個人)は責められて仕方ないかもしれませんが、このようになった背景としては人手不足、管理費不足があると言わざるを得ません。
今回のような、草刈り機で傷つけられたスギの木はここだけではなく、沿線に数多く存在するのも事実です。


地下支柱2010/12/18 11:48

樹木を植え付ける際に、ツツジ等の低木は別ですが、通常、風除けの支柱を立てます。風によって樹木があおられて、根が動いて植付け後に枯れるのを防ぐためです。よく見かける方法としては杉丸太を利用して、鳥居型に組んで設置する方法、あるいは、3本の丸太を頂点で結束してマストを立てるようにし、それに樹木の幹や枝を固定するやり方です。しかし、これらの方法だと、多くの樹木をまとめて植え付ける場合には、支柱が異様に目立って美観を損ねるばかりではなく、通行の障害になったりします。そのような場合には地下に支柱を設置します。
方法は、最初に金属製の四方に張り出したアンカーを地中に埋設します。それから、樹木をその上に載せて、根鉢の部分をアンカーに接続したベルトで固定するというものです。これだと見た目もすっきりしますし、通行の支障になることもありません。しかし、問題が全くないではないのです。樹木は年を重ねるごとに成長しますから、ベルトで固定した部分が樹木の幹に食い込んでしまうのです。当然その部分は首を絞められたまま成長しますので、折れやすくなったり、成長できずに枯死することもあります。なので、近年では4~5年で腐食して外れてしまうベルトも使われているようです。

地下支柱埋設の様子
地下支柱


樹木を支柱(アンカー)に固定している様子
植付け状況


今回植栽するシマトネリコ(高さ5.5m程度)
シマトネリコ


霜対策として寒冷紗を巻いている様子
寒冷紗


植付けはご覧の地下支柱でしっかり固定して無事完了しました。しかし、この日に植え付けたシマトネリコという樹木は元々、台湾や沖縄等の亜熱帯地方が原産の寒さに弱い樹種です。そこで、霜対策として、遮光や虫除けに用いる寒冷紗で枝葉で包んで、霜によって葉っぱが傷まないような対策を講じました。
樹木を植え付けるのに一番最適な時期は通常冬場の休眠期です。なので、11月下旬~3月初旬となります。今の時期は植栽に適した時期なのです。ただ、シマトネリコやクスノキ等の常緑樹は霜が降りると葉っぱが黒く萎れてしまい、そのまま枯れることもしばしば、そこで今回は寒冷紗をかけて霜が直接葉っぱに当たらないような対策をとりました。
見た目はあまりよくありませんが、これから3月初旬までの辛抱です!

街路樹も正月準備2010/12/20 14:45

写真は熊本から阿蘇を経由して大分市に伸びる国道57号線の菊陽バイパス付近のものです。丁度、この辺りには街路樹としてナンキンハゼが350本ほど植えられています。ナンキンハゼという名の通り中国原産で、秋には赤く紅葉し、その後、ハゼの実に似た皮が茶色で中が白い実をつけ、以前は実際にロウを取っていたという事です。しかし、ハゼのようにウルシ科の樹木ではなくトウダイグサの仲間になります。
比較的暖かい気温があれば、どんな環境にも適応できる強健な樹木のため、九州など西日本では街路樹や公園樹として多く用いられています。ただ、成長が早く街路樹など見通しが必要な場所で植栽した場合、写真のようなかなり強めの剪定を行わなくてはなりません。1年間で2m以上も枝を伸ばすので、交通の支障になる危険性もあるし、台風などの強風時には裂けたり、折れやすかったりという材のもろさもあるからです。


ナンキンハゼの剪定


冬の間、枝葉を切り詰めて、かなりさびしい樹形となりますが、来春5月中旬にはほぼ、元の姿に回復しているはずです。
この日は、写真の高所作業車2台(黄色い車)を使用しての作業を行っており、通りかかったドライバーさんも信号停車の際には物珍しそうな顔でしっかりと眺めていってました。


ナンキンハゼ剪定2


冬の桜2010/12/21 15:52

熊本市内の繁華街である桜町界隈では、その名の通り桜の花が今満開を迎えています!?
ただ、桜と言っても、皆さんおなじみのソメイヨシノではなく、ヒマラヤ桜という品種です。その名の通りヒマラヤ地方が原産で、標高1000m~2300m程の高地(ヒマラヤでは高地と言えるのか…)で自生しているとされています。日本でみられるものは1968年にネパールの皇太子より贈られたもの子孫だという事です。通常、12月上旬~下旬にうすピンクの花を葉の展開と同時に咲かせます。

ヒマラヤ桜



上の写真は某百貨店の前に植えられたものですが、この通りにはケヤキやコブシ等の他の樹木に混じって3本ほど植栽されています。
実は、いつも今頃になると桜の開花の様子を気にしていたのですが、これまでは、花数も少なく、色も鮮やかでないため、「どうしてこんなぼやけた樹木を植栽したのだろうか?」と疑問というか不満に思っていました。ところが、今年は遠くからでも人目を引くほどの鮮やかなうすピンクの花がほぼ満開状態となっていました。おそらく、秋以降気温が順調に下がってきたことと、適度な降雨がこのような満開をもたらしてくれたのだと思われます。
そして、満開の花には熊本城の方向からヤマガラやメジロなどの野鳥が飛んできて、メジロなどは一生懸命に花の蜜を吸っている様子でした。

ヒマラヤ桜とヤマガラ
    ヤマガラは留鳥で椎の実や昆虫などを餌にします。


昨日今日は、日中15℃を超える温かさだったために、鳥たちも陽気に誘われて、桜の枝に止まっては飛び立ちを繰り返していました。
花の見ごろは今週末までといったところでしょう。お近くの方は是非、お出かけになってみてはいかがでしょうか?

ヒマラヤ桜とメジロ
   メジロは昆虫のほかに果実や花の蜜を餌にします。

春の準備2010/12/24 16:30

今日はクリスマスイヴ。ここ熊本でも繁華街には光のオブジェが登場したり、路面電車にもブルーのまばゆい電飾を施したものが走ってたりで、なんだか少し強引気味に聖夜の雰囲気を盛り上げているような気がします。そんな中で、目抜き通りの街路樹にもずいぶん前からイルミネーションがつけられて、綺麗と言えば綺麗なのですが、少し樹木が可哀そうでもあります。
よく見てみると、電飾が施されているのはイチョウやケヤキの落葉樹が中心です。これらの樹木は葉は落としますが、死んでいるわけではありません。冬の間も春に展開する葉っぱや花の目を少しずつですが膨らませているのです。
写真は、当社が樹木の管理を担当させていただいている、ある療養所の庭の梅の枝です。ご覧のように、冬の間にも冬芽を成長させています。

梅の冬芽


先の尖った楕円形に膨らんでいるのは花芽で、横にある三角に近い小ぶりのものが葉芽です。花芽は少しピンクがかった色になっているのが判ると思います。この様子だと来年の梅の開花は例年になく早いかもしれません?
ケヤキやイチョウも同じように冬芽を成長させているのです。よく見ると枝にたくさんついているのを確認できるハズです。
このような枝に電飾を施すために先の方までコードが巻きつけられたりしています。もちろん、電飾自体も熱を発します。これらの影響で樹木自体にもかなり負担がかかっているのは間違いありません。11月頃、繁華街にある某百貨店前のケヤキが丸く不自然な形に剪定されていました。その後、すぐにイルミネーションが取付られたのを見ると、電飾がしやすいようにケヤキを刈り込んだようです。
冬のイルミネーションは人の気持ちも華やいだものにしてくれるし、商店街の活性化にもつながるとは思います。ただ、その為に、樹木の自然な美しさを損ねるようなことをしては、そのお店や商店街のセンスを疑いたくなります。樹木の美しさを引き立てるような飾りつけであってほしいし、出来ればイルミネーションをする期間を今よりも少し短くしていただければよいのですが…。