講習会の週末2012/06/04 14:25

 先週の金曜日、久留米市で開催された講習会に講師として出席してきました。講義内容は植栽基盤診断士という造園の資格試験の為の土壌学です。
 場所は久留米市東部、耳納山麓の小高い丘の上にある某王手造園会社の研修室をお借りしての講習会です。研修室の窓からは黄色く色づいた小麦畑の中に集落が点在し、遠くは佐賀県の脊振山系も望むことが出来ます。こんな素晴らしい景観の場所で、土壌学などあまり興味をそそられそうでもない話を聞かされる受講者の方は可哀そうだと思いつつ、自分の持ち時間である90分を休憩も入れずにフルにしゃべってきました…。

 私の担当のセクションは土壌の基礎という、土壌の構造や、組成、土壌微生物や、地理的な土壌分布等々、講師、受講者ともに最も忍耐力を要する箇所です。なので、テキストは最初の60分程度で軽めな解説に止め、残り30分は実際の土壌の画像と、植栽基盤整備の実例の紹介をしました。


 下の写真は文明の利器iPadを用いて森林土壌の断面についての説明を行っている様子です。本来ならば、プロジェクターを介し、スクリーンに映し出すつもりだったのですが、貸していただいた機器とipadの相性が悪かったために、小さい画面をご覧いただいています。
植栽基盤診断士

 
 翌々日の3日(日曜日)は江津湖畔にある熊本市動植物園みどりの相談所研修室で行われた恒例の“観葉植物の寄せ植えセミナー”の様子です。

 参加者は15名だったのですが、小さなお子様連れなど例年になく若い世代の方々が多く来られてました。このセミナーの目的は参加者の皆さんが、自分たちの手で各々のミニ観葉植物の寄せ植えを作成してもらうというものです。

 前回までは、寄せ植えの作成に先立って、観葉植物の特性や土づくりの基本についてお話をさせていただいてました。しかし、今回はそろそろネタ切れ状態だと考え、観葉植物の生育環境とは似通ったところのある九州の樹木についての勉強をし、観葉植物の育て方に役立ててもらいというかなり無理やりな考えの元、自分の持ちネタを披露しました…。

 下の写真が、国の天然記念物で日本一のキンモクセイと言われる“麻生原のキンモクセイ”の紹介をさせていただいているところです。


緑のセミナー熊本市動植物園


 画像を撮り忘れましたが、15名の受講者の皆さんは、ご自分の寄せ植えの作品にはどなたも満足げの様子でしたし、私の持ちネタにも深く興味を示されていたことを最後にお伝えしておきます。

常緑山法師2012/06/12 17:29

 熊本県を含む九州北部もいよいよ梅雨入り、これからジメジメじっとりの不快な季節がしばらく続きます。この季節、アジサイの花も盛りを過ぎ、花ショウブが見ごろを迎えていますが、一般の家庭でこれを楽しむには必要とする面積的な点の他にも色々と問題がありそうです。やっぱ菖蒲園みたいな場所に出かけで愛でる植物なのでしょうね?

 そこで、この季節のジメジメ感を一掃してくれて、しかも、狭くてあまり日当たりのよくない場所でも育つという便利?な樹木をご紹介します。

 それが下の写真の“常緑山法師”です。熊本市内中央区M様邸に一昨年の秋に植栽したものです。植栽当初は1.5m程の樹高だったのですが、現在では2倍ほどに成長しています。
常緑山法師

 北側の庭の狭いスペースでもご覧のように、枝全体にまんべんなく花を咲かせてくれます。ご主人様曰く「花が多すぎで若干うるさいと思ったのですが、家に帰って真っ白に咲き誇った姿を見ると、何だか気持ちが明るくなります!」だそうです。
 人間、能天気なさまを見るとどことなく気持ちが安らぐのかもしれません?

因みに、この樹木の正式名称は常緑ヤマボウシ ホンコンエンシス月光というそうです。
ホンコンエンシスの改良版でより花付きを良くしたとありました。そういう点では品種改良に成功した一例なのでしょう。
 
 皆さんご存知と思いますが、ヤマボウシやハナミズキの花に見える部分、この場合は白い部分は花ではなく総苞片と言い、いわゆるがくに当たる部分です。花は額の中心の頭状になった丸い塊です。


タブノキの剪定2012/06/25 13:08

 今年1月、このブログで紹介したタブノキについて、その枯枝を剪定することになり、樹木医の仲間の方が実際の作業をされました。

 1月の時点では衰弱の原因として、ここ数年の夏場の高温乾燥に加え、数年前に周辺の造成工事が行われた際の根系の切断による、水分の吸収不足を挙げていました。その後、昨年の7月にこの樹木に落雷があったという事実が明らかになり、この影響で幹内部の組織が壊死し、衰弱したという可能性も考えられるようになってきました。

 何はともあれ、私たちとしましてはタブノキの樹勢を回復するのが、第一目的ですので、これまでに灌水や雨水を地下に浸透させるための竹柵等の設置作業を行ってまいりました。

 そして今回、枯れたままになって、これからの台風シーズンに落下の危険性がある、大枝の剪定作業を行う事になりました。


作業中1

 実際の作業は高所作業車では届かないため、25トン吊のクレーン車にゴンドラを吊るし、その中に人が乗り込んで行う事となりました。

作業中2

 ゴンドラには2人が乗り込み、1人がチェーンソーで枝を切断し、もう1人(樹木医でこの造園会社の社長)が枝を腕で支えて地上まで下す役目をされていました。
 作業の当日は、実際の剪定作業に当たられた造園会社の方々の他に、熊本市職員の方やタブノキを守る会の代表者の方、それから私と同期の樹木医の方が作業を見学していました。私たち外野の人間は殆ど午前中で帰ったのですが、作業自体は1日がかりだったと思います。
 
 重たい樹木の枝を1日中抱えて下すのも、さぞ重労働だったと思います。本当にお疲れ様でした。苦労のかいあってか下の2枚の写真を見比べると、作業前と比較して随分スッキリとしたことが分かると思います。

剪定前
                                  作業前の写真
剪定後
                                  作業後の写真

 今後も夏場の灌水作業等、かなり大変な仕事があると思いますが、作業をされている様子を見に行って、このブログで奮闘の様子をお伝えできればと考えています。