サクラは冬支度?2011/10/04 17:41

 写真は数年前から、ソメイヨシノの花が咲かなくなったとの相談を受けている、熊本市近郊のとある公園のサクラです。
益城城跡公園の桜

 ご覧のように葉がほとんどなく、早くも冬支度に入ったかのような光景です。しかし、下の芝生は緑のまま…。何だか変な風景ですが、熊本市内では9月中旬ごろから桜の花が落ち始め、今はどこもこのような光景を目にします。
 
 おそらく、8月のお盆のころまで暑さの厳しい気候が続いたかと思いきや、急に涼しくなり、そしてまた9月の上旬には暑さがぶり返したり、とにかく気温変動の激しい夏でした。そのことが、サクラの消耗を招き、落葉したのではないかと考えています。
  
 去年は11月中旬に見事に紅葉した桜を見ることが出来たのに、何だか不思議な気がします。
私としては、どうせ落葉したのだったら、このまま冬までじっとしておいてほしいと願います。これから間違って花を咲かせたり、新芽を出したりしても、桜が衰弱するだけであまりいいことは無いからです。
 肝心の花芽ですが今のところ順調というか、他のサクラと変わらず健全な状態を保っています。
桜のつぼみ

 ただ、12月に入ると毎年のように野鳥が来て花芽を、木の上の方から食べ荒らしてしまうのです。おそらく、ウソか或いはヒヨなんかも食べてると思われます。
 
 11月下旬ぐらいから鳥が来ないように見張りに行かなければなりません…。

森オヤジ2011/10/07 15:04

 ちょっと以前に、山ガールとか森ガールと言われるアウトドア系の女性達が都会にも増えている。というニュースが流れていました。その時は「やっぱ、都会に住んでいて、今まで自然を知らない人に限って、そういうものに憧れるんだよなぁー。」なんて、思っていました。
 
 私はこんな仕事をしていて言うのもなんですが、別にアウトドアがそれほど好きなわけでもありません。もちろん、山(低い山)を登れば気持ちがいいですし、山頂から眺める景色は格別なものがあるとは思います。ただ、それを定期的に続けようという気にはならないだけです。
 
 そんな私が今朝、森林インストラクターで樹木医の先輩と熊本市近郊の森に行ってきました。
以前にこのブログでも紹介した場所です。

森林の樹木

 森に入ると、普段自分たちの身の回りにある樹木でも形が違って見えます。上の写真に写っているのはシイノキ、カシ、コナラ、クヌギなのです。人里に近いところでは、もっと下の方から葉っぱが出ていて、ずんぐりむっくりな形をしています。しかし、森のなかではご覧のように下枝がほとんどなく、すぅーとした樹形で葉っぱは樹木の上の方しかついていません。
 
 森のなかでは光を求めて木は上へ上へと成長をします。そして光が弱く光合成がうまく出来ないような下の葉を落とすのでこんな形をしています。それから、多くの樹木が過密に生えているので、横に枝を伸ばせないのです。

 森林インストラクターの方と2人でどんな樹木が生えているのかを確認しながら森を進んで行きました。

森林の赤松


 すると、上の写真でも分かるような根元の低い部分の樹皮が剥がれ、土が付着した赤松を発見しました。この様子を見れば、いかにアウトドア系ではない私でもすぐにピントきました!
 イノシシが、自分の体についた虫を落とすために体をこすりつけた痕です。しかも、よく見ると付近の落葉が乱れている様子もあり、すぐ近くのクリの木にも同じような痕がついていました。
森林のクリ

 幹の中段から不思議な形に湾曲していますが、根元には土が付着しています。この2本以外にも何か所も同じような樹木を目にしました。おそらく、イノシシはかなりの数生息しているものと考えられます。
 この森にはクリの木が多く、下に畑らしき場所もあることから、えさが豊富で住み易いのでしょうか?

森林のハリギリ
 
 遊歩道の足元には新たな命も多く芽生えていました。上の写真は成長すると20m程の大木になるハリギリの幼木です。枝というか茎のところに針のようなとげが生えているので、この名前がついたと言われています。

森林の中の隠れ蓑

 上はハリギリと同じウコギ科のカクレミノの幼木です。三つに裂けた葉が蓑の形に似ているのでこの名前が付きました。こちらも成長すると10m以上の大木になり、成長とともに葉の裂け目が浅くなり、裂け目が殆んどなくなったりもします。

 30~40分程の森の散歩でしたが、一人ではとても来たくないと思っても、山の樹木や植物に詳しい人と一緒に歩くとなかなか楽しいものです。

 私も、これからは、具合が悪くなった街中の樹木や巨樹・古木だけではなく、森のなかの植物をもっと勉強して、本格的な山オヤジとなり、都会の山ガールの皆さんのガイドが出来るようになれればと痛感した次第です。(笑)

秋は実りの季節2011/10/12 08:00

 ここ数日、日中の夏日が続いていますが、我が家の猫の額ほどの庭にも確実に秋が訪れています。近所のキンモクセイはこの秋二回目の花を咲かせ今が満開というところです。我が家にいても色んな方向から、あの甘いけど爽やかな匂いが漂ってきて、どこか幸せな気分になったりします。

 そして、南側に植えた樹木にも、ささやかですが秋の実りがありました。

ツリバナの実

 上の写真はツリバナの実です。樹高2m程で7本ぐらいの株立ちの樹木です。初夏の頃、長さ10センチ程度の細い柄の先に、小さなうすピンクの花を数輪咲かせることからこの名前が付いたとか。小さな花からは想像できないようなしっかりとした実をつけます。うちのような半日陰の狭い庭向きの樹木かもしれません。

西洋カマツカ

 次は、西洋カマツカです。大きさは最初のツリバナと殆ど同じくらい、株立ちになっているところも似ています。花は以前にこのブログでも紹介しましたが、うすピンクの苺のような花をたくさんつけます。苺と同じバラ科の植物になります。西洋と名前がついているぐらいなので、当然、単なるカマツカもあります。カマツカの方が大きく育つみたいです。しかし、カミキリムシの害に遭い易く、注意が必要です。その点、西洋カマツカは害虫や病気の心配もほとんどなく、急に大きくなるようなこともないので、これから庭木として人気が出るかもしれません。


ヤマコウバシ

 最後は、黒い実をつけるヤマコウバシです。熊本の山でもたまに見かけるクスノキ科の落葉樹です。ややオレンジがかった色に黄葉し、その後、葉は落葉せずに枯れ葉のまま枝に残ります。そして、春に新芽が展開する際に、枯れ葉を落としていきます。クスノキの仲間と言っても
あまり大きくは成長しません。

 これから11月に入ると本格的な紅葉の季節に入ります。我が家の庭でも、ハナミズキが赤く色づいてきました。イチョウやモミジの色づく頃が待ち遠しいです。
 一年のうちで、樹木が一番美しく輝く季節の始まりをキンモクセイの匂いが知らせてくれるのかもしれません?

駅前ケヤキの伐採2011/10/19 10:28

 丁度、ふた月ほど前このブログで『危険な街路樹』というタイトルで紹介した熊本駅前のケヤキが伐採されることとなりました。この沿道には両側に23本ほどのケヤキが植栽されているのですが、今回の伐採対象は私が以前紹介したキノコが生えているもの2本と、根元に大きな空洞がある1本を加えた合計3本です。

 下の写真はそのうちの1本、額縁屋さんの前に植えられたキノコが生えているものです。

駅前ケヤキ キノコ

 樹木の向かって左側、高さ80㎝程の箇所と地際の2箇所に白いキノコが確認出来ます。
前回の調査でも、キノコの発生と樹木の幹に空洞も確認できたので、伐採して植え替えるという判断をしていたものです。

 実際の伐採作業はクレーン付きトラックを用いて、幹の上部を吊り上げながらチェーンソーで行いました。
駅前ケヤキ切断


 幹の上の方は健全な白い色をした材だったのですが、やっぱりというか、予想通り根元の部分は半分以上に腐朽が広がっていました。(下の写真参照)

駅前ケヤキ 切断面

 このケヤキ、すぐに倒木の危険が迫っていたかどうかは分かりませんが、このまま放置していれば先日の台風でケヤキが倒れ、タクシーを潰している映像が流れた、渋谷道玄坂の事故の二の前だったかもしれません。

 熊本市内でも、根元にキノコが生えたり、大きな空洞が空いている街路樹が他にもたくさんあると思います。行政でも、正しい判断が出来る人による点検と、その後の処置の徹底を急がれることを期待するばかりです。

 作業中、数名の方からどうしてケヤキを伐採するのか?との質問を受けました。キノコの話と実際の切り口をご覧いただき納得していただいた次第です。

 私としては、伐採したままではなく、新しい苗木を植えて立派な街路樹を育てていただきたいと願います。

巨樹3本2011/10/31 17:41

 熊本県北部に位置するY市には古代の山城跡や、古墳など多くの遺跡が残されており、或る説によると邪馬台国もここにあったのでは?と言われるほど古くから人の営みが盛んだった地域だそうです。

 昨日はそんな歴史豊かなY市教育委員会の方と一緒に、この地域の巨木3本の調査に行ってきました。
 実はこの調査、4年ほど前からY市が指定する保存樹木を毎年3本程度ずつ見ていくもので、かなり気長な調査でもあります。と言っても、Y市はいったい何本の樹木を指定しているのか私は未だに担当者に聞いていません。(汗)

 11月になると必ず担当の方から電話を頂き、その都度Y市某所で待ち合わせをして現地に案内していただく段取りになっています。

 最初の樹木は市東部の丘に建つ神社の境内の樹木群です。クスノキ2本とムクノキ2本それに下の写真のイチイガシの計5本が指定されているそうです。

松尾神社のイチイガシ

 幹の下の部分はキヅタが着生しており樹皮の様子は判りづらいのですが、幹周5m以上はあろうかという巨木です。中は空洞になっており、縦方向に開口部が広がっています。
 しかし、幹内部に空洞があるにも関わらず樹勢は至って健全で、下から見上げると葉が金色に見えるイチイガシ特有の姿を楽しませてくれました。

 次はツツジと桜の名所である日輪寺のラカンマキです。

日輪寺の羅漢マキ


 脇に建てられている案内板には 樹齢750年、幹周5.7mと書かれていました。
通常、成長の遅いマキの木で巨木と呼ばれるものは珍しいのですが、なかなか堂々たる姿です。湿潤な環境を好むところがあるので、山の斜面のお寺の境内という立地も好条件となったのでしょう?

 最後は、街中から路地を入ったところにあるイチョウです。

来民の大銀杏


 戦国の武将で熊本城を築城した加藤清正のお手植えとされており、樹齢400年を数えるそうです。イチョウにしてはかなりずんぐりむっくりの樹形をしていますが、何でも、1997年の落雷による火災で三日間燃え続けたそうです。中は空洞で、幹の表面も半分ほどは腐朽が進んだ状態であり、キノコも発生していますが、ご覧のとおり枝葉は至って健全な状態です。幹の一部がまだしっかりしており、その部分を通じて土壌から水分やミネラルを吸収しているのでしょう。

 同行された教育委員会の方は写真右上の枝がアンバランスで倒木の心配をされてました。
しかし、枝おろしを行えば、そこから腐朽が広がる事も懸念され、衰弱を招くことにもなりますし、枝が民家にかかっているという事でもないので、このままの養生保護をお勧めしました。

 今回、調査した樹木以外にもY市にはまだまだたくさんの巨樹・古木がありそうです。
また、来年も秋に電話がかかってくるのが楽しみです。