初夏の花木2014/05/10 10:48

 春を鮮やかに彩った桜や藤の花も終わり、季節はすっかり新緑へと移り変わりました。ここ熊本市周辺の山々を見渡すと同じ新緑でも、白っぽい色をしたものや黄色がかったものが見られ、正に“山笑う“季節の到来と言ったところでしょうか?
 実はこの緑のグラデーションは新しく展開した葉色の違いもあるのですが、山の樹木の花の色でもあるのです。椎木や栗の木の淡いクリーム色や樟の花の黄緑等々、少し地味な花々ではありますが、季節に色を添えています。

 そんなこの季節、街中でも見られる花木を幾つか紹介します。
最初はトチノキです。漢字で書くと栃ノ木、文字通り栃木県の県木で宇都宮のメインストリートには高さ20mを超えようかという大木が街路樹として大きく枝を伸ばしています。非常に涼しげな印象の樹木です。
 
 下の写真は熊本市内に街路樹として植えられているものです。枝の先端にロウソク状の白い総になっているものが花です。

トチノキ

 近くで見るとご覧の通り、花の集合体が縦に連なっているのがわかります。楕円形をした大きな葉とのバランスがよく、最近は九州でも街路樹として植えられる様になってきました。
 因に、近縁種である西洋トチノキはフランスではマロニエと呼ばれ、パリのシャンゼリゼを彩る街路樹でもあります。東京銀座にもマロニエ通りというものがあり、近年、この名前をとった商業施設もオープンしたそうです。何となく都会的な雰囲気がするのでしょうか?

トチノキ花
 
 次は、近所の公園に生えていたセンダンです。熊本ではわざわざ植えるというよりも、勝手に種が落ちて大きく育ったらしいものを良く見かけます。

センダン

 花は下の写真のように、薄紫で遠くから見ると綿菓子のような雰囲気のあるものです。近くに寄るといい香りがします。ただ、諺にある『センダンは双葉より芳し』のセンダンは本来、香木として知られる白檀の事だそうです。

センダン花

 最後は熊本で最も身近な樹木と言っても過言ではないクスノキです。下の写真は近所の琴平神社の入口でとったものですが、これでも満開の状態です。どことなく緑が薄く見えるのが実は花なのです。

クスノキ

 よく見ると、小さい花が沢山咲いているのがわかります。多くの人は気付かれてないと思いますが、この季節に花盛りを迎えクスノキ特有の揮発性の香りも強くなります。

クスノキ花

 この季節、まだまだ沢山の種類の樹木が花盛りを迎えています。桜などと違い花色が白や黄緑などで以外と地味な事、また、葉っぱが展開した後に小さな花を咲かせる事もあって華やかさには欠けます。しかし、よく見ると魅力的な花も多く、良い香りのものも多くあります。これから、公園や郊外へお出かけの機会があれば、是非樹木を観察してみてください。きっと、お気に入りの花木が見つかるはずです。

続初夏の花木2014/05/19 09:41

 最近は九州でも雨が頻繁に降るようになってきて、奄美大島までは梅雨入りしたとか…。
熊本を含む九州北部の梅雨入りまで、あとわずかといったところでしょうか?
 そんな雨の日に、来月15日に行う講習会の下見を兼ねて熊本市動植物園まで出掛けてきました。

 植物ゾーンの入口から入ると、温室の裏に樹木の見本園があります。動植物園の中でも一番地味なエリアと言うか、普段はあまり人の出入りが少ない場所ですが、常緑・落葉問わずいろんな種類の樹木が植えてあり、この場所の有効活用を兼ねて昨年から樹木講座を行っています。

 生憎の天気だったのですが、かなりの種類の樹木に初夏の花が咲いていました。そんな中から、ジメジメとした気分を解消してくれるような白い花を幾つか紹介します。

 最初は、皆さんよくご存知のヤマボウシです。最近では庭木としても好んで植えられるようになりました。

ヤマボウシ

 緑の葉の上に白が鮮やかに映えて、庭の色彩のコントラストを引き立たせるには理想的な樹木ではないかと思います。しかし、皆さんが花だと思われている白い部分は、実は苞と言って花を包んでいる葉の部分なのです。本当の花は苞の中心に細かく集まっているものがそれにあたります。細かい事は抜きにしても、この季節に涼やかな印象を与える花木です。

 次は、カタルパという樹木です。おそらくはじめて聞かれる方も多いのではないかと思います。あの同志社を創立した新島襄が明治の初めの頃にアメリカから種を持ち帰り、熊本にゆかりの深い、徳富蘇峰、盧花兄弟とその父に送ったものが広まったとされています。

カタルパ

 大きな三角形の葉の上に、白く中心が紫の花を咲かせる姿が特徴的です。ノウゼンカズラの仲間だと言う事です。熊本市内にある徳富記念館のものが有名で、開花の頃には地元のニュースでも頻繁に取り上げられます。

 最後はオオヤマレンゲです。高さが1〜3m程度の中木になります。平地では殆ど見られず、主に標高1000m程度の山地に自生しているそうです。


 名前の由来は奈良県の大峰山に自生しており、ハスの花(蓮華)に似ていることからきているとされています。

 写真は開きかけで分かりにくいのですが、純白の花びらに赤い雄しべがとても印象的な花です。モクレン科の樹木になります。

オオヤマレンゲ花

 この季節はピンクや赤や黄色といったカラフルで豪華に咲き誇る薔薇が満開を迎えています。花の豪華さや香りの強さに関しては正に女王といったところでしょうか?
 前回、今回と御紹介した花はバラのように豪華というのとは違うかもしれません。しかし、素朴で清涼感があり、個性的なものが多く見受けられます。これからも季節の花木の情報を多く紹介していければと考えています。