ヒヤシンスの花2011/04/04 16:43

 熊本城の桜もほぼ満開となり、樹木の話題と言えばサクラの話ばかりになりがちなので、気分を変えて別の花の写真を撮ってみました。
 我が家の玄関脇に昨年の冬に植えておいたヒヤシンスの球根が見事な花を咲かせてくれました。確か、青とオレンジと白の3種を3~4球ずつ植えたのですが、青が一番最初に咲き始めました。
 おそらく青が原種に近いので、この色が先に咲くのでしょうか?

 ヒヤシンスを育てるのは、はるか昔に小学校で販売されていた水栽培キットを買ってきて自宅のテレビ(昔のブランウン管テレビは厚さがあった)の上で育てた以来です。一回り小ぶりでブドウの房のような花を咲かせるムスカリは庭の片隅に植えていたのですが、本当に久しぶりにヒヤシンスを楽しんでいます。

ヒヤシンス

 
 朝夕は独特の甘い香りを漂わせてくれて、花持ちも良く、春の花のシーズンにいち早く咲いてくれるので、是非、みなさんにもお勧めです。
 
 ヒヤシンスの名前はギリシャ神話の美少年ヒュアキントスに由来するとか。ヒュアキントスが愛する医学の神アポロンと一緒に円盤投げに興じていた。この様子を見ていた西風の神ゼピュロスはヒュアキントスへの嫉妬心から風を吹かせ、アポロンの投げた円盤をヒュアキントスの額に当て、彼を死なせてしまった。その際に大量に流れ出た血から、この花が生まれたとされている。
 このエピソードから花言葉は「悲しみを超えた愛」だそうです。

 そのような話を聞けば、この花の美しさと、その濃厚な香りはどこか神秘的な魅力を持っているようにも感じられます。

 ヒヤシンスに限らず、球根の花は簡単に育てることが出来ますし、病害虫の心配がないものが殆んどなので、ガーデニングには必須のアイテムかもしれません。お勧めです!

熊本城と桜2011/04/05 11:38

 桜の話題は前々回の分で止めておこうと思ったのですが…。今朝、仕事で熊本市役所に寄ったついでにお城の周りを歩いてみたら、あまりにも見事に咲いており、お城の白黒の壁とのコントラストも素晴らしかったのでやっぱりこの話題にします。

 熊本の方であれば下の2箇所はいずれの場所もおなじみかと思います。最初の写真は長塀越しの桜です。お城の中から塀の外にこぼれるように花を咲かせています。休日ともなれば、塀の下に広がる芝生の土手でお弁当を広げて花見をする人たちでにぎわう場所です。

熊本城長塀の桜


 さらにもう一枚は天守閣へ上がる御幸坂の桜並木です。道の両側にはソメイヨシノが植えられており、この季節はまさに花のトンネルといったところでしょうか?歩道には提灯や街灯も設置されているので、歩きながらの夜桜見物もなかなか風情があります。

熊本城御幸坂の桜

 この季節はどこの町でも桜が主役となり、この季節に限って大切に思われたり、有り難がられたりするのですが…。花の季節以外にあまり大切にされているとは言い難いこともあって、どこの桜も生育状況にそれなりの問題を抱えています。

 現に、この御幸坂の桜などは、幹や枝の部分をよく見てみると、腐っていたり、枯れていたりするものが多く見当たります。
 私も坂を上って天守閣の手前まで歩いてみたですが、中には衰弱の為に花付きが極端に悪くなっているものを何本も見かけました。
 桜はもともと苗木の時から日当たりを好む陽樹と言われる樹木になります。一見この場所も日当たりはよさそうなのですが、写真の左後ろにも映っているようにイチョウの陰になるところがあったり、他の樹木や桜同士が重なり合ったりして、必ずしも快適とは言い難い環境にあります。さらに、根が伸びていく土の部分が固くなっていることも成長を阻害している原因だと考えられます。

 桜が健康に成長するためには植栽の間隔を十分(10m以上)にあけ、土壌を柔らかくする事が重要だと考えます。苗木の時には間隔をあけると寂しくなるため、ついつい接近させて植えてしまいます。しかし、成長が早く、高さも葉張りも10m以上にも成長する樹木だという事を考慮して植栽すべきです。陰になった枝は枝枯れを起こし、その枝を切除することによって、新たに枝の腐朽が進行していくという悪循環が多く見受けられます。まさに“桜切るバカ梅切らぬバカ”ということわざどおりです。植栽当初どうしても密に植えたいときには数年後に間1本ずつを間引きするような計画を立てることも、桜並木を長く楽しむ一つの方法だと考えます。

やっぱり桜2011/04/08 10:06

 この時期は他の樹木や植物の話題を探そうとしても、やはりサクラに目が向いてしまいます。
 なので、今回は理屈抜きでほぼ満開を迎えている花のある風景を紹介します。
菊池神社の桜

 最初は県北部にある菊池公園の参道です。夜桜見物のための照明器具が準備されていました。

八景水谷公園の桜

 熊本市の八景水谷公園の桜です。こちらはかなり散り始めており、散った花弁が水面に浮かんで綺麗です。

緑川ダムの桜

 
 最後は緑川ダム湖畔の桜です。山の中で見る桜は街のものよりも色鮮やかなような気がします。周辺の山々の緑も萌え出し、まさに山笑う季節の始まりというところでしょうか。正岡子規の俳句に“故郷やどちらを見ても山笑う”というものがありますが、きっと今頃の季節の松山の風景を想像して詠んだのでしょうか?

黒木町の木橋2011/04/11 11:14

 この前の土曜日、NHK文化センターの現地講座の下見に福岡の八女市まで行ってきました。今回の見学地の中で最大の目玉である黒木の大藤の様子も見てきたのですが、房が10~15㎝には伸びていたものの、見頃まではあと2~3週間といったところでしょうか?
 
 下の写真は大藤から歩いて5分ほど、黒木町の中心部を流れる矢部川に架かる木橋、南仙橋を川の上流に立って写したものです。

黒木町南仙橋

 
 川沿いに植えられた桜も盛んに花びらを散らしており、これに代わって歩道沿いの芝桜が目にも鮮やかに咲いていました。かつては日本中のいたるところで目にすることが出来た風景かもしれませんが、現在では殆どの木橋は姿を消してしまい、とても貴重な風景だと感じました。

黒木町南仙橋2

 2枚目の写真は下流側から振り返って見たときのものです。空に2本の電線がみえますが、これさえなければ、いったい何時の時代の写真なのか分からなくなります。

 現地講座当日もフジの花を見学した後に、この辺りまで散策できる余裕があればよいのですが…。


将軍木2011/04/14 17:10

 写真は熊本県立菊池高校正門脇に植えられているムクノキの巨木、通称:将軍木です。名前の由来は今から600年以上前の南北朝時代にこの地と関わり合いが深かった懐良親王(かねながしんのう)のお手植えと言い伝えられています。よって、推定樹齢は600年以上となります。もし、これが本当だとしたら、ムクノキとしては異常に長寿の木だと言えます。

将軍木(椋の巨木)


 この、木の道を挟んで手前(写真の撮影方向)には能舞台がもうけられ、今も松囃子能が毎年奉納されているとのこと。
 
 丁度、今の季節は新芽が展開し始めの頃で、あと半月の後には目にも鮮やかな新緑を楽しませてくれると思います。

将軍木裏側

 この木には、鉄製の支柱が何本も施され、幹の裏側は空洞化が進行し、樹皮がバラバラにならない様に鉄製のベルトで幹の中ほどを結束されています。しかし、木の勢いそのものは比較的良好で、枝枯れや内部の腐朽を示す、キノコなどは見受けられませんでした。
 これからも少しでも長くこの地で生き続け、将軍木という名前のような雄姿を見せてもらいたいものです。

今年最初のバラ2011/04/19 16:38

 ここ熊本では桜のすっかり終わりを迎え、キリシマツツジやヒラドツツジがピンク、紅、白、紫など色とりどりの花を咲かせ始めました。それでも例年より2週間ほど遅れているみたいです。

 残念ながら、我が家の庭はツツジを楽しむほどの広さが無いので、20本程のバラを鉢植えで楽しんでいます。そして、今年もいよいよ花の季節を迎えつつあります。そんな中、おそらく最初に開花してくれるであろうと思われるのが、下の写真のバラです。名前はミセス・ハーバート・スティーブンス 1922年の作出と言われています。

ミセス ハーバート スティーブンス


 剣弁高芯の花の咲き方からピーター・ビールズのリストではハイブリッドティーに分類されていますが、花首が細くうつむき加減に咲く姿と、房咲きになる特徴はノワゼットのようでもあります。
 
 系譜の話は別にして、ミセス・ハーバート・スティーブンスは今まで私が見た白バラの中では一番のお気に入りです。花径10㎝程の大きさになりますが、花弁には自然なウェーブが掛かり、その数も多すぎず、とても上品な雰囲気があります。
 ピーター・ビールズの本にもまさにファーストクラスのバラであると書かれていました。

 バラがお好きな方は庭中に色々なバラを集めて植えられる傾向があるのですが、このバラであれば、他の樹木との相性も良いです。
 たとえば雑木を使った庭のアクセントとして、なんの違和感もなく用いる事ができます。香りもかすかなティーの香りがして爽やかですよ。
 
 今の流行はデビッド・オースティンが作るイングリッシュローズなのかもしれませんが、オールドローズや初期のハイブリッドティーの中にはこれに負けない魅力的なバラが多いですよ。お勧めです。
 

ツツジの花は五分咲き2011/04/22 14:37

 下の写真は来週の現地講座の打ち合わせのため、熊本市内のNHK放送会館を訪れた時のものです。この場所は熊本城の東に隣接しており、千葉城と呼ばれる一帯で小高い丘の斜面にはたくさんのツツジ(ヒラドツツジ)が植栽されています。ただ、今年は例年より10日ほど開花が遅れ、やっと5分咲きの状態です。

NHK下のツツジ


 実は、1週間ほど前に、NHKの方から電話で「週末からつつじ祭りを予定しているのですが、どうして今年は花があまり咲いていないのでしょうか?」との問い合わせがありました。今年はツツジばかりではなくバラやヤマブキ等他の花木も開花が遅れていたので、冬場から続く低温傾向が影響しているとの回答をしていたのですが、もしや他にも何か原因があるのではと気になっていました。
 そこで、仕事の打ち合わせの前にツツジの様子をこの目で確かめに行きました。別に害虫や病気の様子もなく、やっぱり自分が思っていたように低温と降水量不足が原因と考えられます。

NHK下のツツジ2

 
 あと、1週間か10日も経てば丁度見ごろを迎えるだろうと思われます。祭りの2日前ではなく、前もって聞いてくれれば、日程の調整など対策が考えられたのに…。
 ただ、今年はゴールデンウィーク頃に丁度見ごろとなるはずですので、お近くの方は是非、遊びに行かれてはいかがでしょうか?

ギンモクセイの花?2011/04/26 10:00

 先日、熊本市内某所での打合せの後の帰り道、お城の下を歩いていたところ、どこからともなく甘い香りが漂ってきました。どこかで嗅いだことのある匂いだと思い、もしかしたらモクセイの花の匂いかも
しれないと半信半疑だったのですが、あたりをよく見渡すと咲いていました。

 神社の境内の道沿いに3本ほどのギンモクセイです。皆さんが良く目にされるキンモクセイは花色がオレンジがかっているのに対し、こちらはクリーム色。元々キンモクセイはギンモクセイの変種だと言われています。

ギンモクセイ

 
 下の写真で見ると花が咲いている様子がよく判るかと思います。
しかし、どうしてこの時期に花を咲かせたのでしょうか?理由は私にもよく解りません。確かに9月~10月にかけて2度花を咲かせることはあるのですが、まさかこの季節に花なんて…。
 私も初めて見ました。

ギンモクセイの花

 
 知り合いの樹木医数名に聞いてみたのですが「狂い咲きでしょう?」という答えしか返ってきませんでした。

 狂い咲きの理由として私が推測するに、以下のような条件が秋の開花期の気候条件と一致するために秋と勘違いしたのではと思います。

①この春の気候が比較的低温のまま、一定の温度を維持している事。

②雨量が通常の年よりも極端に少なく、秋のような乾燥状態となっている事。

以前このブログでもご紹介しましたが、サクラ等では10月頃に狂い咲きしているものをよく見かけます。
理由としては上に挙げたような気候の類似点に加え、台風や虫害でサクラの木に殆ど葉が無い状態のものをこの季節に見かけます。気候が同じで、自分たちも葉をつけてないのであれば、これから春が来ると
勘違いしても無理はないですよね。植物には人間社会のような12か月という暦があるわけではないのです。

黒木の大藤2011/04/28 13:17

 昨日、講師を務めるNHK文化センターの現地講座で福岡県筑後地方まで行ってきました。講座名は『樹木医と行く巨樹・古木巡り』となっており、主に九州各地の巨樹、古木、名木、名園等を訪れるというものです。このブログでも準備の様子も含め、何度か紹介したと思います。
 
 昨日はあいにくの雨だったにも関わらず、30名近い大勢の方に参加していただき、しかも、見学中は雨も止んでくれて本当に良かったです。これも、参加者の皆さんの日ごろの行いが良いからに他なりません。

 この日の見学コースは以下のとおりでした。

① 清水寺本坊庭園  室町時代の雪舟作とされる日本庭園
           庭一面を覆う苔と背景の山の借景が見事。

② 長田の大銀杏  幹回り11.6m 福岡県天然記念物 県下最大の 
          イチョウ 高さ1m程の所で幹が7本に分岐。

③ 津江神社の樟  幹周12m 樹高40m 福岡県天然記念物
          幹が地上10m近くまで真直ぐ伸びている。

④ 黒木の大藤   樹齢約600年 最長のつるの長さ70m 藤棚の
          面積2000㎡ 国の天然記念物 花序の長さは
          1mを超しあたり一面に甘い香りを漂わせる。

⑤ 桁山のカヤ   樹齢約1000年 幹周6.6m 樹高17.5m 茶畑
          の中にあり、雄と雌が合体した縁結びの木。

 下の写真は黒木の大藤のある素戔嗚神社境内で撮影したものです。
黒木の大藤


 昨日の時点ではまだ5分咲き程度だったのですが、フジ特有の甘い香りに思わずうっとり。肝心の説明を忘れそうになるほどでした。
 参加者の皆さんには今回の講座をとても満足していただいたようで
肩の荷が下りたような気がしています。

 次回、秋の講座は紅葉と絡めて巨樹・古木を巡るコースを考えます。このブログでも下見の段階からご紹介していきたいと思いますのでご興味のあられる方は
NHK文化センター熊本教室 ℡096-351-8888 までお問い合わせ
ください。